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TTArtisan (銘匠光学)M 35mm f1.4 ASPH

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 ミラーレス一眼・パナソニックG1が登場した当初、これほどのハイペースで「ミラーレス一眼」が市場を席捲してしまう事を予想できた方は恐らくは少数派だったのではないでしょうか。登場時その恩恵はボディの小型化やシステム全体での軽量化が中心と捉えられ、その後各メーカーから相次いで投入されたのは、入門機やサブ機といった立ち位置の機種が殆どでしたから無理もない事です。しかし、ミラー駆動の制約を解かれた事による連写スピードの暴力的なまでの向上や高精細動画撮影への対応、ライブビュー技術を駆使した撮影環境の革新、被写体認識技術の向上とそれに伴うAF機能の飛躍的な進化など、現在のデジタル一眼進歩の原動力となった技術の多くが,ミラーレス化を抜きに実現できなかった事は疑う余地も無く、今となってはミラーレス化の必然性を多くの人が感じているに違いありません。

 さて、そういったカメラの革新とも言えるミラーレス化により、光学系にクイックリターンミラーが不要となったことで、撮像素子とマウント面の距離(フランジバック)を大幅に縮める事が可能となりました。これによりレンズ設計の自由度が上がり、描写性能の向上やレンズの小型化といったメリットが生まれた訳ですが、同時にマウントアダプター併用によるメーカーやモデル、製造年代を跨いだカメラ・レンズの相互利用範囲が爆発的に増えるという副産物をもたらしました。レンズを絞り込んだ状態でもEVFや背面液晶などの画面が暗くならない(電気的に増幅していますので、限度はありますが)ミラーレス機では、レンズ側に解放測光の為の連動機構や電気的な通信機構を持たないレンズであっても、実絞りを優先したAEや、マニュアルでのピント調整による撮影が十分可能になります。結果として、シンプルな機構しか持たない旧世代のレンズ(いわゆるオールドレンズなど)が簡単に最新機種で活用できるため、どちらかと言えばマニアックな撮影方法であったマウントアダプターを使った撮影を、オールドレンズブームという追い風もあって、表現手法の一つとして完全に定着させるに至ったのです。

 これらを背景として、近年急速にその存在が認知されるようになってきたのが、「アジアンレンズ」「中華レンズ」などとも言われる、アジア・中国圏のメーカーによって生産・販売されるレンズ群です。レンズ自体にはピントと絞りの調節機構だけが備わっていれば良く、生産コストが嵩む複雑な絞りの連動開閉機構や電子的な通信機構を持たない「シンプル」なレンズであっても、市場で十分に競争力を発揮できる環境が整い、新興メーカーにとっての絶好の商機となったようです。当初は大手ECサイトを中心に、安価でありつつも挑戦的な解放f値と焦点距離を持った実絞りのマニュアルフォーカス単焦点のレンズや、デザイン含めて日本製品をまるパクリした上手に模倣したような製品が注目されていましたが、昨今では性能面でも注目を浴びるような製品や、超広角・超望遠・シフトレンズといったメーカー純正ではなかなか手に届きにくいレンズが比較的安価で入手できる事もあって年々認知度を上げています。

 現行のLeicaMマウントレンズを手本としたことがひしひしと伝わる本レンズも、金属製鏡筒の仕上げや、ピントリング、絞り(完全な等間隔ではありませんが)の操作感も非常にレベルが高く、描写性能にも十分以上に満足が行きます。むしろ画一的に高性能となった現代のレンズと比べ、その独特な「味」は、好印象と受け取れる場面は少なくないのです。他社製ではありますが「周」ブランドによる一連のオールドライカレンズ復刻品に至っては、その外観だけでなく「描写」まで本家と見紛うほどで、もはや技術力に疑問を持つのはナンセンスでしょう。デジタルデバイスにおいてすでに世界屈指の技術を持つ強大な隣国が、本格的にデジタルカメラ市場に参戦する、そんな青写真すら見えて来そうです。我々ユーザーが安価な高性能レンズが手に入る・・・そんな甘い誘惑に惑わされているうちに、とんでもない逆転劇に巻き込まれないよう、自国のカメラメーカにはしっかりと兜の緒を握りつづけていだきたいと思ったりもする今日この頃なのです。

 

 

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なかなかに良い雰囲気の映像となりました。初代Summiluxは、解放付近ですと画面のコントラストはかなり低く時折手を焼きますが、本レンズは解放からかなりしっかりとしたコントラストで描きます。合焦部である看板の注意書きと木洩れ日のアウトフォーカス部分によって立体感が良い感じで際立ちます。

 

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開放f1.4です。ハイライトが滲む傾向はありますが合焦面の解像度(画面中央やや下あたりでしょうか)は高く、画面全体のコントラストは十分に高いのが分かります。四隅の像はやや崩れる感じが見受けられ、後ボケはチリチリとする癖があるようです。

  

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ご覧の様に条件によって周辺の光量がバシッと落ち込みます。高輝度部は若干フレアっぽい印象もありますが、解像度は十分に高いと言えます。昭和の物流を支えた電気機関車の少しくたびれた躯体と、レンズ描写の持つ癖が上手くマッチングしているように感じます。画面全域にわたって光学的性能を高めた国産メーカーの最新レンズではなかなか見られない、いわゆるオールドレンズらしい味わいを楽しめるのではないでしょうか。

 

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開放絞りのふわっとした感じはf2.8あたりからすっかり消滅して、被写界深度の広がりを感じるf5.6あたりでは画面全体からとてもシャープな印象が伝わってきます。四隅で像がやや崩れる感じは僅かに残っていますが、スナップやポートレートでは問題になることは希でしょう。

 

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緻密ですが、カリカリとしない優しい描写です。Summiluxと比べるのであれば、初代よりは近代的な描写、非球面化された最新型と比べれば良い意味での緩い描写という事になるでしょうか。モデルチェンジが早く比較的短命に終わる商品が多いのもアジアンレンズの特徴の一つですから、Summiluxの約1/20の価格で入手できるうちにお迎えできたのはラッキーでした。

 

 

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被写体はデゴイチの相性で有名なSLの「D51」。本来重厚な印象が強い被写体ですが、絞ると繊細な描写を見せるレンズなので、精密模型を見ているようなイメージになりました。なんとなく画面上部のコントラストが低いのは、ハレ切りの手間を怠った私の落ち度が原因です。凝った仕上げの金属製角形フードが純正で付属していますが、21mmレンズ用?と感じるほどの厚さ(薄さ)しか無いのでレンズ保護や装飾面以外でのメリットはあまりなさそうな印象ですね。逆光・迷光が悪さをしそうな場面ではちゃんとハレ切りしたほうがよさそうです。

 

 

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世界的に有名な写真家「ロバート・キャパ」の著書「ちょっとピンボケ」にあやかり、ちょっとどころか随分ピント外れな人生を送る不惑の田舎人「えるまりぃと」が綴る雑記帳。中の人は大学まで行って学んだ「銀塩写真」が風前の灯になりつつある現在、それでも学んだことを生かしつつカメラ屋勤務中。

The PLAN of plant

  • #12
     文化や人、またその生き様などが一つ所にしっかりと定着する様を表す「根を下ろす」という言葉があるように、彼らのほとんどは、一度根を張った場所から自らの力で移動することがないことを我々は知っています。      動物の様により良い環境を求めて移動したり、外敵を大声で威嚇したり、様々な災害から走って逃げたりすることももちろんありません。我々の勝手な視点で考えると、それは生命の基本原則である「保身」や「種の存続」にとってずいぶんと不利な立場に置かれているかのように思えます。しかし彼らは黙って弱い立場に置かれているだけなのでしょうか?それならばなぜ、簡単に滅んでしまわないのでしょうか?  お恥ずかしい話ですが、私はここに紹介する彼らの「名前」をほとんど知りませんし、興味すらないというのが本音なのです。ところが、彼らの佇まいから「可憐さ」「逞しさ」「儚さ」「不気味さ」「美しさ」「狡猾さ」そして時には「美味しそう」などといった様々な感情を受け取ったとき、レンズを向けずにはいられないのです。     思い返しても植物を撮影しようなどと、意気込んでカメラを持ち出した事はほとんどないはずの私ですが、手元には、いつしか膨大な数の彼らの記録が残されています。ひょっとしたら、彼らの姿を記録する行為が、突き詰めれば彼らに対して何らかの感情を抱いてしまう事そのものが、最初から彼らの「計画」だったのかもしれません。                                 幸いここに、私が記録した彼らの「計画」の一端を展示させていただく機会を得ました。しばし足を留めてくださいましたら、今度会ったとき彼らに自慢の一つもしてやろう・・・そんなふうにも思うのです。           2019.11.1

The PLAN of plant 2nd Chapter

  • #024
     名も知らぬ彼らの「計画」を始めて展示させていただいてから、丁度一年が経ちました。この一年は私だけではなく、とても沢山の方が、それぞれの「計画」の変更を余儀なくされた、もしくは断念せざるを得ない、そんな厳しい選択を迫られた一年であったかと想像します。しかし、そんな中でさえ目にする彼らの「計画」は、やはり美しく、力強く、健気で、不変的でした。そして不思議とその立ち居振る舞いに触れる度に、記録者として再びカメラを握る力が湧いてくるのです。  今回の展示も、過去撮りためた記録と、この一年新たに追加した記録とを合わせて12点を選び出しました。彼らにすれば、何を生意気な・・・と鼻(あるかどうかは存じません)で笑われてしまうかもしれませんが、その「計画」に触れ、何かを感じて持ち帰って頂ければ、記録者としてこの上ない喜びとなりましょう。  幸いなことに、こうして再び彼らの記録を展示する機会をいただきました。マスク姿だったにもかかわらず、変わらず私を迎えてくれた彼らと、素晴らしい展示場所を提供して下さった東和銀行様、なによりしばし足を留めて下さった皆様方に心より感謝を申し上げたいと思います。 2020.11.2   

The PLAN of plant 2.5th Chapter

  • #027
     植物たちの姿を彼らの「計画」として記録してきた私の作品展も、驚くことに3回目を迎える事ができました。高校時代初めて黒白写真に触れ、使用するフイルムや印画紙、薬品の種類や温度管理、そして様々な技法によってその仕上がりをコントロールできる黒白写真の面白さに、すっかり憑りつかれてしまいました。現在、フイルムからデジタルへと写真を取り巻く環境が大きく変貌し、必要とされる知識や機材も随分と変化をしましたが、これまでの展示でモノクロームの作品を何の意識もなく選んでいたのは、私自身の黒白写真への情熱に、少しの変化も無かったからではないかと思っています。  しかし、季節の移ろいに伴って変化する葉の緑、宝石箱のように様々な色彩を持った花弁、燃え上がるような紅葉の朱等々、彼らが見せる色とりどりの姿もまた、その「計画」を記録する上で決して無視できない事柄なのです。展示にあたり2.5章という半端な副題を付けたのは、これまでの黒白写真から一変して、カラー写真を展示する事への彼らに対するちょっとした言い訳なのかもしれません。  「今日あっても明日は炉に投げ込まれる野の草さえ、神はこのように装ってくださるのなら、あなたがたには、もっと良くしてくださらないでしょうか。」これはキリスト教の聖書の有名な一節です。とても有名な聖句ですので、聖書を読んだ事の無い方でも、どこかで目にしたことがあるかも知れません。美しく装った彼らの「計画」に、しばし目を留めていただけたなら、これに勝る喜びはありません ※聖書の箇所:マタイの福音書 6章30節【新改訳2017】 2021年11月2日

hana*chrome

  • #012
     「モノクロ映画」・「モノクロテレビ」といった言葉でおなじみの「モノクロ」は、元々は「モノクローム」という言葉の省略形です。単一のという意味の「モノ」と、色彩と言う意味の「クロモス」からなるギリシャ語が語源で、美術・芸術の世界では、青一色やセピア一色など一つの色で表現された作品の事を指して使われますが、「モノクロ」=「白黒」とイメージする事が多いかと思います。日本語で「黒」は「クロ」と発音しますから、事実を知る以前の私などは「モノ黒」だと勘違いをしていたほどです。  さて、私たちは植物の名前を聞いた時、その植物のどの部分を思い浮かべるでしょうか。「欅(けやき)」や「松」の様な樹木の場合は、立派な幹や特徴的な葉の姿を、また「りんご」や「トマト」とくれば、美味しくいただく実の部分を想像することが多いかと思います。では同じように「バラ」や「桜」、「チューリップ」などの名前を耳にした時はどうでしょうか。おそらくほとんどの方がその「花」の姿を思い起こすことと思います。 「花」は植物にとって、種を繋ぎ増やすためにその形、大きさ、色などを大きく変化させる、彼らにとっての特別な瞬間なのですから、「花」がその種を象徴する姿として記憶に留められるのは、とても自然な事なのでしょう。そして、私たちが嬉しさや喜びを伝える時や、人生の節目の象徴、時にはお別れの標として「花」に想いを寄せ、その姿に魅了される事は、綿密に計画された彼らの「PLAN(計画)」なのだと言えるのかもしれません。  3年間に渡り「The PLAN of Plant」として、植物の様々な計画を展示して参りましたが、今年は「hana*chrome」と題して「花」にスポットを当て、その記録を展示させていただきました。もしかしたら「花」の記録にはそぐわない、形と光の濃淡だけで表現された「モノクローム」の世界。ご覧になる皆様それぞれの想い出の色「hana*chrome」をつけてお楽しみいただけたのなら、記録者にとってこの上ない喜びとなりましょう。                              2022.11.1

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