SONY FE 35mm F1.4 GM (SEL35F14GM)
レンズ構成(群-枚):8-12 > 10-14
フィルター口径:72mm > 67mm
絞り羽根枚数:9枚 > 11枚
最短撮影距離:0.3m > 0.27m(AF時)
重量:630g > 524g
長さ:112mm > 96mm
何の一覧かと申しますと本レンズ FE 35mm F1.4 GM が、先行発売されていた Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA と比べて変更になった主な諸元です。左側が Distagon > 右側が G master の物です。
加えて申し上げるならば、
希望小売価格(税別・2026年時点で併売):164,000円 > 216,000円
といった、価格差も存在しています。
数値上から判断されるスペック向上分の価格差はもちろん、加えて描写性能向上が見られるかどうかがやはり気になる所。元々220,000円(税別)という価格で販売され、G Master の登場によって実質的には下位機種扱いとしての値下げが行われた Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA の心中を代弁して、とは言いませんが、なんとなくモヤモヤしている自分(@デジタル移行直前までCONTAXやHasselbladで、Zeiss製レンズにはさんざんお世話になった)がここに居るのです。「見せてもらおうか、SONY製 G Master レンズの性能とやらを」と、ツノと赤色が大好きな御仁がおっしゃったとか、おっしゃっていないとか・・・。
さて、フルサイズにおける35mmという焦点距離のレンズは「広角レンズ」中では、その描写に顕著な癖が存在しない為に「準標準レンズ」のような表記もされたり、「標準レンズ」として考えている事を公表する写真家も存在しています。かく言う私も、モータドライブ付きの Nikon F3 に Ai Nikkorの35mm F2 を装着し通学の友としていた学生時代などは、視覚の延長としてこの画角を好んで、課題制作の多くをこなしていた事を記憶しています。
単焦点として初めて購入した35mmは、上記のレンズよりもさらに一段明るい Ai Nikkor の35mm F1.4 。当時はポートレート作品のバリエーションを増やす目的で広角レンズの必要性を感じ、できるだけボケが大きくなるレンズを選びたかったのがその購入動機でした。高校生時代にお世話になっていた写真店主に「前玉に少しキズあるから、安くするよ」と見せられた中古の個体をお迎えをしたのですが、現在では「クセ玉の代表格」として語られる事も多い、そのとてもエモい描写(注釈:収差により強烈な個性を発揮する)が後に軽くトラウマとなったのも良い思い出です。目的であった解放絞りの映像は、中心部の解像度は十分ながらもフレア・ハロが競演する軟調ソフト描写で、加えて顕著な二線ボケが背景を乱雑化するじゃじゃ馬っぷりでしたので、乗り手として圧倒的に経験・技量不足であった若かりし筆者などは、幾度となく落馬させられたのです。先人の残した作例や貴重な経験談を簡単に入手する手段の無かったインターネット未発達時代の逸話として「明るい広角レンズには気を付けろ」という家訓とともに、後世まで語り継がれたのです。なんだこれ。
Nikkor の面目の為に申し上げますが、35mm F1.4 のオリジナルは1971年発売の、押しも押されもしないオールドレンズ。一眼レフ用としては世界初・無二の存在でありました。レフレックスミラーの存在や、Nikon 伝統のフィルター径52mm縛りという足枷の中、コンピューター設計も未発達であり、非球面や低分散ガラスなどが贅沢に使用できない設計環境下で達成されたスペックであることを理解しておかなければなりません。後発となる Leica SUMMILUX-R や YASHICA/CONTAX 用の Zeiss Distagon のフィルター径は67mm。オートフォーカスに世界で初対応した MINOLTA の非球面レンズ採用 35mm F1.4 でさえ55mm だったのですから、一眼レフ黎明期に設計されたフィルター径52mmの Nikkor 誕生は、さぞかし難産であった事が容易に想像できます。1絞りの明るさの価値が、現在よりも数段は重かったフイルム時代、本レンズにのみ許された撮影ステージは決して少なくはなかったはずであり、多くのマニュアルフォーカスレンズの製造が中止されていく中、本レンズはシリーズ末期までラインナップに残り続けていたという事実もここでしっかりと加えておこうと思うのです。
さて、Nikkor の発売から40年以上が経ち、SIGMAの Art シリーズ第一弾として登場した35mm F1.4 DG Art(2013) は、これまで持っていた「レンズメーカー」・「35mm F1.4」への個人的イメージを根底から覆し、 歴史上 Art 以前と以降という明確な区切りを感じるほどに衝撃的な描写性能を持っていました。無論デジタル一眼のミラーレス化以降に発売された Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA(2015)、Art 自身のミラーレス対応レンズである 35mm F1.4 DG DN Art(2021) といった高性能レンズ達にも、少なからぬ影響を与えた事でしょう。当然、本レンズ(2021)へも然り。開放絞りから画面全域を満たす繊細な良像域とデジタル補正のアシストを受け丁寧に補正された歪曲・色収差。6000万画素を使い切るであろう高い解像度は、広角レンズである事を完全に忘れさせる極めて滑らかな前後のボケ像によって一層際立ちます。「ええぃ! SONY 製の G Master は化け物か!」と、かの御仁が(以下略)。この値千金ならぬ、差額52,000円以上の働きを心に刻みつつ、なんだか Nikkor と SIGMA Art の紹介記事になってやしないか?との反省と共に、新しい家訓と購入費用の必要性をひしひしと感じているのです。余談ながら、執筆中に訪れたCP+2026の会場では、35mm F1.4 DG DN Art の後継レンズがこっそり置かれていたのは気付かなかった事にしておくとしましょう。
前日の夜中に降り始めた雪は早朝には止みましたが、出勤時間にはまだ所々積雪があり、歩道橋の上からは日常とは違う景色が広がり写欲をそそります。開放での描写ですが、自然なボケ、信号機上の雪の質感、重く湿った路面の描写、良い感じです。
ボケの様子をもう少し観察したくて、路地から住宅の隙間を一枚。侵入を防ぐための柵を手前に大きく入れてみましたが、とても自然にボケているのには驚きです。広角レンズのF1.4描写が、これほどまでとは脱帽するしかありませんね。合焦部の地面部分は砂の粒子がしっかり感じられるほど解像されており、G Master の高い実力が感じられます。
昨年に続き、CP+の会場へ赴いて情報収集を。田舎に隠居する身ですから、しばらくぶりの都会のスケール感に圧倒されます。相手が大きい為なのか、近頃持て余し気味に感じる35mmの画角がとてもしっくりと来たのがちょっと新鮮でした。Nikon Z5Ⅱへ装着しての撮影でしたが、オリジナルでは若干残る樽型の収差も、Lighiroomのレンズプロファイルを適用するとご覧の通りスッキリと。絞り込めば遠景まで圧倒的な解像度で記録します。
雑居ビルの隙間に取り残された電気メーターが時代の変遷を物語り、すでに居住者が居ない物件に繋がれた古いタイプのメーターに時間の重さが滲みます。周辺光量落ちを期待つつ、さらに露出をマイナスへシフト、開放であっても周辺まで高い解像力を維持してくれるので、安心して暗い被写体に挑めます。
モノクロームの映像に着色を施したかのような映像になりました。なかなか田舎では道路を真上から見下ろす機会は少ないので、こういった状況に出会うとほぼ無意識にカメラを向けてしまいますねぇ。赤い自動車でも通ってくれたら色彩的に面白くなったんですが、しばらく待っても一向に通らなかったので諦めました・・・。最近試用したどの35/1.4よりも軽い本レンズ。比較的軽量なZ5Ⅱに装着すると、ハンドリングも良く長時間ぶら下げていても苦にならないのはいいですね。
海なし県出身なので、波の音を聞いただけで無暗にテンションが上がってしまいます。そういえば大学生時代(校舎は内陸に存在)に瀬戸内出身の同級生が、時折海を見られない事の禁断症状を訴えては湘南方面に出かけていたのを思い出しました。現在都会に住んでいる娘は、時折山や星空が見えない事に対して禁断症状があるみたいです。ノスタルジーってのは自身に刷り込まれた源風景への禁断症状が引き金になるのかもしれないですね。それにしても開放で、この色ノリは反則ではないでしょうか?
ホテルの外壁(ミラーガラス?)に映った向かいのビルや空模様が、なんとも不思議な都市景観を作り上げていました。雲の流れが速く、写り込む風景が刻々と変化をして行きますので、連写を使って後から映像をチョイス。絞り込めばさらに解像度が上がり、外壁の小さなタイル一枚一枚が克明に描写されます。本当に化け物の様な性能を発揮してくれます。
CP+会場、パシフィコ横浜の二階入り口前。まだ閉場まで時間がありましたが、チョットした偶然なのか通行人が全く居ない瞬間に出会いました。長時間露光やGoogleピクセル加工したかの如く、蒸発したかのように人影がありません。パンフォーカスを得る為、F11まで絞り込んでの撮影。Z5Ⅱは極端な高画素機ではありませんが、手前から奥まで気持ちの良い画質でレンズの高性能を受け止めてくれました。
















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