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2010年10月

2010年10月11日 (月)

CONTAX Leica-L改造 Biogon 28/2.8

 俗に、必要は発明の母と言います。
 また、単なる無い物ねだりが時として優秀な発明の大きな原動力となってきたことが、人類史上では珍しいことではありません。
 

 何時の頃からでしょうか、その独創的な機構と工芸美溢れるデザイン故、ライカは 「ボディーのライカ」と言われ、対して、優秀な数学・物理学者による優れた設計と世界屈指の光学ガラスを用い優れた写真用レンズを供給してきたツァイスは「レンズのツァイス」と呼ばれています。両者が、お互いをライバル関係としていた背景もあり、ライカのボディーにツァイスのレンズを付けて撮影するという行為は、多くの写真愛好家にとって、それはある種の夢とも言える「無いものねだり」の典型でありました。

 過去には、ライカスクリューマウント(L-マウント)用に供給されたツァイスレンズが数種類存在していましたが、いかんせん何れも製造が古く、試しで購入するにはその価格面から見ても余りにリスキーでありました。ですから、最新の光学設計でCONTAX-Gマウント用に、ツァイスがBiogon28ミリを発表した時に、それをライカマウントに改造できないかと考えた人物が、決して少数でないことは想像に難くありません。

 しかしながら、かたやオートフォーカス専用に設計され、ヘリコイドや距離計に連動させるカムを持たないレンズを、ライカボディーで完全互換作動させることは、おそらく大変な試行錯誤の連続であったでしょう。それは、ライカ用レンズを設計し続けてきた「アベノン」だからこそできた、改造の域をこえた一つの発明と言っても過言では無いはずです。(2010年現在はMSオプティカルさんで同様の改造を行っています)

 おいそれと中古市場には出現しないこの改造レンズを所有し、ライカのレンジファインダーを通して撮影できる一瞬は、愛好家にとって至福の時間となりましょう。ちなみに、その素晴らしい描写性能に関するコメントは「CONTAX G Biogon」の欄に譲るといたします。

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CONTAX Fish-Eye Distagon 16/2.8 AE-G

 写真レンズには、実際には実現困難で、それはある種の理想でしかないのかもしれませんが、「直線は直線に」「点は点に」「平面は平面に」写さねばならないという設計上の大前提があります。

 しかしながら、その最前レンズが大きな弧を描く独特のスタイルと描写特性から「魚眼レンズ(Fish-Eye)」と呼ばれ、180度以上という画角をフィルム上に納めるために、あえて直線を直線として写さない設計を施されているものがあります。

 天頂を向けると、360度全ての地平線が画角に収まる円形の画像を形成し、主に天体観測や気象観測などの分野で利用されるいわゆる円周魚眼は、あまり一般用途とは言い難いのですが、このレンズのように、一般レンズと同じ24x36ミリの長方形画像を形成する焦点距離15ミリや16ミリの通称,「対角線魚眼」と呼ばれるこの種のレンズは、その画像の強烈なイメージから特殊用途ではありながらも作風に変化を付けるめ、その的確な利用法を見いだす愛用者も多い様です。

 特殊レンズ故、描写性能には余り期待を持っていなかったのですが、恐ろしいほどのシャープネスとクリアな発色が、180度という未知な画角とともに、鮮烈なイメージを描き出し、画角上太陽が直接画面内に入る事態が多いのにも関わらず、ゴースト、フレアの発生は非常に少なく、Tスターコーティングの実力を改めて思い知らされました。

 極度に強調された遠近感と、大きく湾曲した地平線等、その画像の強烈な印象に捕らわれがちですが、この「味の素」臭さを脱却する事が出来れば、このレンズの魅力は、もっと計り知れないものになるでしょう。持ち手の技量を量る、そんなFish-Eye Distagonです。

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CONTAX Distagon 21/2.8 MM-J

 「禁断のレンズ」Distagon21ミリ。

 一般的には長焦点レンズで問題となる色収差。それを低減させる為に用いられる低分散ガラスをその光学系に用いたため、書籍「Only Zeiss2」中では「APO Distagon」と詠われ他メーカーの同クラスのレンズと比較して、大きさ、重量では約2倍。価格に至っては3倍近くをカタログ値でマークします。

 フィルターサイズも82ミリと巨大で、外見からは超広角レンズというより,むしろ望遠レンズの風格さえ感じさせ、その存在感も一級の物を持ちます。設計の上で、携帯性や、価格よりまず第一に描写性能を求める、Zissの設計思想を改めて思い知らされるこのレンズの描写は、一度味わってしまったら最後。あとは、手持ちの不要機材を全て処分してしまで購入しなければないほどの、強烈な所有欲をかきたてます。

 開放から凄まじいピントのキレを見せ、周辺部まで均一な画像を形成します。広角レンズでは形を崩しがちな前後のボケも、近距離から文句無く、美しく合焦部を引き立てます。f2.8のもたらす眩しいほどのファインダー像は1/4秒を切らねばならぬような室内撮影でも確かなピントを約束してくれます。構成枚数の多さと、どうしても写り込みやすい太陽の為の逆光時のゴーストは、ほんの愛嬌と言えるでしょう。

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2010年10月 9日 (土)

CONTAX G Biogon 28/2.8

 絞り羽根を挟み、前後対象にレンズを配置する対象型レンズは、描写上問題となる各収差を効率的に除去できる設計方法として、レンズ設計の中では非常に歴史が古く、現在でも大判カメラ用レンズでは主流のレンズ構成となっています。

 しかしながら、レンズ後端とフィルム面との間にミラーを配置しなければならない一眼レフでは、短い焦点のレンズを対象型で設計する事は物理的に不可能となります。このため一眼レフ用の短焦点レンズでは、レトロフォーカスと呼ばれるレンズ構成を用いる事が多いのですが、残念なことに新種のガラスや最新の設計理論を用いたとしても、歪曲収差や色収差の補正面において、対象形設計のレンズの性能を再現することは困難を極めます。

 ですから、ミラーボックスを排除したコンタックスGシリーズ用の広角レンズとして、「Biogon」の名を冠する対象形設計の銘レンズが復活したことは、写真界にとってまさに福音とも言えるでしょう。 銘レンズの名に恥じない完璧なまでに補正された歪曲収差。少ない構成枚数がもたらす何処までもクリアな画質。そして素晴らしいコントラストと解像感。さらに写りの凄まじさからは想像も出来ないコンパクトな鏡胴とリーズナブルな価格。その魔力はいったい何人のフォトグラファーをGシリーズ所有者と化したのでしょうか。

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2010年10月 8日 (金)

CONTAX Distagon 25/2.8 MM-J

 Distagon21ミリほどの強烈な印象があるわけではなく、35ミリほどの万能性があるわけでもありません。比較的古い設計にあたるためか、開放付近では周辺光量も真面目に落ち、発色もどちらかといえば渋い方でしょう。f2.8という明るさも、とりわけ明るい部類ではなく、他メーカー製品と比べ約二倍の8万円超の価格設定は、購入するのに少々勇気が必要かも知れません。

 しかしながら、どういう訳か撮影時には迷うことなくこのレンズを携行している自分に、実は最近気がついたのです。

 カタログ値には現れない、描写上の底力とでも言いましょうか、25ミリでモノにした作品に、共通するある種の安堵感のような物を感じるのは、私だけでしょうか?その焦点距離が自分にとって使い慣れ、親しんできた時間が長いという理由だけでは到底説明の出来ないこのレンズへの信頼感は、やはりZeissレンズならではのものではないでしょうか。

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CONTAX Distagon 35/1.4 MM-J

 フィルムでの撮影時、もしレンズを一本だけ持って行くのだったら迷わずこの35ミリを選ぶでしょう。

 f1.4の明るさは大抵のシチュエーションでの手持ち撮影を可能にし、ずば抜けた近接撮影時の能力は、簡単なマクロ撮影までこなします。開放付近では微妙な甘さを残した 合焦部分と、なだらかにつながるボケが人物を美しく捉え、f5.6まで絞ればレンズを交換したかのように素晴らしい色のノリとピントのキレを見せてくれます。フローティング機構の影響からか、撮影距離によっては若干背景のボケがうるさく感じられ る場面もありますが、そんな些細な欠点を補って余りある魅力を持つ、私にとっての万能レンズです。

 開発当時疑問視されたと言われる非球面レンズの導入ですが、今日高級レンズだけにとどまらず、多くの写真用レンズに非球面が導入されていることから考えても、Zeissの設計理念が決して間違いではなかった事が証明されたと言えます。

 常用携行レンズにするには、大柄の鏡筒と、ややもするとボディーよりも高額出費になりやすい価格設定は、決して万人にお勧めできるレンズとは言い難いのですが、デジタルが主流になり、中古相場が非常に下がっている今、Zeissの魅力を実感してみたい方は、まずこの一本をお使いになってはいかがでしょうか。

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CONTAX Macro Planar 100/2.8 AE-J

 このレンズの購入前には、名高い60ミリのマクロを所有していたものですから、 当初は購入の候補にすら入っていなかった100ミリのマクロプラナー。

 依頼された撮影でどうしても中望遠が必要となり、勤め先の売り物を借用したのですが、その個体をそのまま買い上げてしまったほどに、その描写性能には驚愕しました。

 開放から完全に実用になるか、もしくは開放の描写に何かしらの代え難い魅力を感じるか・・・ それが、私個人のレンズ購入時の大きな選択理由となるのですが、マクロの名に恥じず開放から完全に実用となる画面全域の均一な精密描写、しかも、アウトフォーカス部分は、まるで溶けるようなマクロレンズらしからぬ描写を見せ 背景にハイライトを含む線状の物体があっても2線ボケとは無縁。色のヌケやカラーバランスも最高で、私が過去に抱いたマクロレンズに対しての悪いイメージを 一気に払拭してくれました。

 等倍撮影時の異様なまでの鏡筒の繰り出し量にはやや 閉口するものの、60ミリとはまた違った魅力を放つZeissの傑作レンズです。

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2010年10月 4日 (月)

Leica Summilux M 35/1.4

 「ライカってずいぶん高いけど・・・なにが違うのだろうか?」

 こんな疑問が私の心に沸き上がったのは、写真学生時代の後半、 自身の作風のマンネリ化に悩んだ頃であります。

 水洗浴から上がったフィルムを初めて見たときから、その結像の特異性は ある種の衝撃を私の心与え、その後のライカとの付き合いを決定づけました。 この旧式のズミルックスは、非球面が導入され、圧倒的なまでの高性能を謳った 最新のズミルックスの登場まで、「その場の空気まで写し込む」といった評価に代表される 古き良きオールドライカレンズの薫りを、新品で楽しむ事のできる数少ないレンズとして、 ほぼ登場初期の設計のまま、比較的長期間製造を続けられていました。

 ズマリット50ミリとともに「クセ玉」と良く称されるこのレンズは、 主に、開放付近では各収差の影響からくる意味不明なまでのハレーションとゴースト、 そして像のにじみを発生し、直接結像画面をファインダーで確認できないM型ライカでは、 被写体や光線状態を十分考慮しないと、結果が予測と一致しないフォトグラファー泣かせの レンズです。ところが、f値5.6あたりから徐々に絞り込むと描写は一変。 まるで大判で撮影したかのような高い解像度を見せ、しかも像の潤いを損なわない 素晴らしい描写を見せてくれます。

 諸般の事情からすでに手元には残っていませんが、今一度この手に納める日を夢に見る 愛すべきレンズの一本であります。

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2010年10月 2日 (土)

Zeiss Planar 50/1.4ZF

 オスカー・バルナックによって完成された、世界最初の35ミリサイズカメラには焦点距離50ミリのレンズが取り付けられていました。

 以来、遠近感の極度な誇張や圧縮がないこの焦点距離は、35ミリカメラにおけるスタンダードレンズとして定着しました。写真に興味をもった方なら、どこかで必ず耳にするエピソードでしょう。今日の様なズームレンズが一般化するまでの長い間、カメラといえば50ミリを付けて買うのが一種当たり前で、実際、私が幼少期に借り出しては注意された父親のカメラにも、ニッコールの50ミリがり付けられていたのを記憶しています。それ故、50ミリレンズの設計、製造には多くのメーカーが心血を注ぎ、結果として「銘レンズ」とよばれるものが多く存在する結果となっています。ライカのエルマーやズミクロンにはそれぞれ熱狂的な信者とも言えるユーザーがいますし、国産のニッコールやロッコールなどを愛用するカメラマンも多いことでしょう。マニュアルフォーカス時代のキヤノンには、明るさ・レンズ構成別に5種類もの50ミリが存在していた時代もあるほどですから、標準というより、むしろ特殊レンズといった名称が似つかわしいほどです。

 そして、一眼レフカメラ用標準レンズの帝王として、やはり多くのフォトグラファーが愛用する50ミリにZeissのプラナーが掲げられます。開放付近では十分にシャープな合焦部にベールのようにまとわりつく柔らかなフレアがとても神秘的な印象をもたらし、f2.8あたりからは、ほぼ画面全域にわたり最高の解像感が得られます。また、実像感を残しつつ、なだらかに消え行く非合焦部の描写は、このレンズでしか味わえない至高の立体感を演出します。

 Y/C時代のMMレンズでは、開放付近のボケにややエッジが強調されてしまうという欠点がありましたが新生Zeissでは枚数を増やした絞り羽根との相乗効果で、「少しだけ絞った」プラナーの一番美味しいトコロを存分に堪能させてくれました。目隠しをしてでも操作が出来るほど、この手に馴染んだニコンのボディーに取り付けられたこのレンズは、文字通り、これから私の新しいスタンダードとなるでしょう。

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Zeiss Distagon 25/2.8 ZF

 大学時代に愛用していたNikonからCONTAXへと、手持ちの機材を全て変更したのは、 ブライダルのカメラマンとしての仕事をしていた当時、職場の先輩の写真を目にした事がきっかけでした。

 それほどまでにZeissレンズの描写との出会いは鮮烈でした。反面、その後度重なり仕事中のBodyトラブルに泣かされることとなり、やがて、叶わない願いとは知りつつ、 NikonのBodyでZeissのレンズを使用することが、ある種の夢となっていました。

 カメラマンとしての活動を辞め、現在の仕事についてから早十年以上。京セラのカメラ事業撤退から数年たったある日、夢は突如現実となりました。 コシナによるZeissレンズの再生産とNikonマウント化。何の因果か・・・新生Zeissの25ミリをテストする機会に恵まれたのは、親類のブライダル撮影でした。

 一生一度、妹の大舞台でのレンズ試用。プロフェッショナルの現場では考えられない奇行を可能にしたのは、私自身のZeissというメーカーへの、そしてDistagonというブランドへの圧倒的な信頼にほかなりません。 Y/C時代から受け継がれる、ディープシャドーからハイライトまで、きわめてなだらかにつながる トーンの描写がもたらす、画面全体にわたる重厚感。そして画面中心部から周辺まで続く、隙のない解像感の高さ。冬の澄んだ空から差し込む強烈な西日を物ともしない逆光性能。これらを高次元でリファインし、新たなDistagon25ミリへと昇華させた、メーカーの信念と技術力には脱帽せざるをえないでしょう。

 21世紀、新たに蘇ったZeissのDNAは、妹の門出に最高の一枚をプレゼントしてくれました。

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