CONTAX Distagon 18mm f4 MM-J
このレンズは、国産メーカーと比較して高価な価格設定が多かったコンタックスレンズの中にあって、珍しく「バカ高い」といったイメージがなかった貴重なレンズです。
コンタックス・ヤシカマウントの中では、比較的古参の部類に入り、新設計のDistagon21ミリが投入されるまでは、超広角レンズの中堅を担う代表レンズでした。それ故に、過去に数多の写真家が優れた作品を残した名レンズであり、日本においてZeissレンズの評価を不動のものとした立役者であったとも言えます。
設計の古さ故、開放f値が4と控えめで、フィルターやフードの取り回しにも若干の制約を受けますが、その古さを感じさせないヌケのよい画像が印象的でした。そして、絞っても適度なウエット感を残し「カリカリ」にならないその描写はモノクロ向きのレンズなのかもしれません。良く補正されたディストーションは、超広角特有の強烈なクセを感じさせず、ひたすらに只、広さだけを感じさせる広角レンズといった感覚で、ファインダーに写り込む全てを優しく包み込んでいました。
残念ながら、最新の21ミリと比較すると解放f値や解像度の差からファインダーでのピントの山がややわかりずらく、低照度時のシャッタースピードに制約が生じる為、21ミリ購入と同時に手放してしまいましたので、この手元にあった時間がごくわずかでした。もし可能であるならば、デジタルでこの優しい描写を再び味わって見たいものです。
現在ではフルサイズでの18mmの画角は大三元の広角ズームでは至極当たり前になっていますが、本レンズの登場時点ではどちらかと言えば特殊なレンズでした。明るさをf4としたことで、ファインダー画像はお世辞にも明るくはなかったのですが、歪曲収差や周辺光量落ちなどの欠点も少なく、癖を感じない素性の良さを感じるレンズでした。
カリカリの描写にならず独特のやさしさを持った描写。当時は21mmのあまりに鮮烈な描写にアテられて売却をしてしまったのですが、齢を経た現在ではこのちょっと懐かしい感じの描写に再び惹きつけられていたりもします。
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