LEICA DG NOCTICRON 42.5mm/F1.2
生まれて初めて手にしたカメラやレンズがLeicaだった、という恵まれた?人は例外とさせていただきますが、Leicaに興味を持ったのは、写真の世界に足を踏み込んで少し時間が経ってから、というのがセオリー(諸説あります)でしょうか。そして、きっとそのブランドに興味を持つと、レンズ毎に耳慣れない呼称がつけられている事に疑問を感じる人も多いでしょう。日本ブランドのレンズではNikkor(ニッコール)であったり、Takumar(タクマー)であったりと、レンズシステム全体を指すブランド名こそ耳にしますが、個々のレンズにそれぞれの呼称が与えられる事は非常に希なケースであるからです。片や、LeicaやCONTAXなどのヨーロッパにその起源を持つブランドのレンズには、ある一定のルールを持ちつつも、レンズ個々に別の名前が与えられている事が多いようです。もしかしたら、人名においてファミリーネームとファーストネームの扱いに差異が生じている様に、歴史背景や文化の違いがこういった面にも影響しているのかと勝手な想像を巡らせると、なかなかに興味深いものです。
さて、話をLeicaへ戻しましょう。前述の通りLeicaのレンズは、様々な由来を持つ個性的なネーミングがされています。一部例外はありますが、基本的には解放f値をある一定の基準として
f0.95/1.0/1.2/1.25:Noctilux
f1.4/1.5:Summilux
f1.5/2.4/2.5:Summarit
f2:Summicron・Summar・Summitar
f2.8:Elmarit
f3.5/3.4/4:Elmar
他:Hektor・Telyt・Thambar・Elmax 等々
と、こんな具合に分類することができます。古い世代では一製品にのみ与えられた名称も多いのですが、現行製品(2022年)にも引き継がれて利用されている名称を色付きで記載してみました。中でも、もっとも明るいf値を与えられた「Noctilux」という名称は、耳にした際に特殊な余韻を残(すような気が)しますが、それは語源にラテン語の「夜」を意味する言葉から派生した「Noct」を含んでいるからでしょうか。Noctといえば、「ノクターン」を想起される方も多いかと思いますが(ノクターンに「夜想曲」という和訳を付けた方のセンスには脱帽します)、カメラ好きにはNoct Nikkor 58mm f1.2が有名でしょう。何れにしましても、夜の灯りですらも撮影可能な明るさを持ったそれらのレンズに、とても似つかわしい響きだと感じます。(最新のデジタルカメラなら高ISO感度と手振れ補正で、わりかしどんなレンズでも夜間に撮れちゃうんですけどね)
ところでお気づきかと思いますが、本稿レンズの解放f値は1.2でありながらも、前述したルールには則っていません。本来ならば「Noctilux 42.5mm f1.2」としても不思議ではありませんが、「Nocticron」というこれまでに聞き覚えの無い名称が与えられています。無論、その時代の最高の明るさを持ったレンズ=Noctiluxであるとすれば、2022年現在Noctiluxを名乗れるのはM型Leica用のNoctilux50mm f0.95という事になりますが(Noctilux 75mm f1.25には気付かなかった事にして・・・)、純血ライカレンズではないPanasonic製レンズには、やはり「Noctilux」は与えられなかったのでは?というのは、さすがにちょっと意地の悪い見方ですよね。ここは「Noctilux」と「Summicron」の間の明るさ=「Nocti+cron」なのだということで、むしろ唯一無二の名称を与えられていることにLeica社の良心を感じ取るべき所なのでしょう。
余談が過ぎました。レンズの本分はやはりその「描写」にこそありますから、その部分をちょっとだけお話ししましょう。現在マイクロ4/3フォーマットという同じ土俵でしのぎを削るオリンパス(OMデジタルソリューションズ)からも、近似スペックでM.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PROがリリースされており、購入者は否応なくその比較検討を強要される形になっています。かく言う私も、一本を選択(金策)するのに2年の時間を必要としてしまいました。両者ともに開放絞りから十分に実用となるピントのキレ、高い解像度とやや控えめなコントラストで紡がれた繊細な画像を形成し、正に「ポートレートレンズ」の王道を往くもので、絞り込んで行くにしたがい、さらに増す解像感は被写体のリアリティーを余す所なくセンサーに叩き込みます。凝視した視覚に近いとされる画角を持つ中望遠レンズとしての存在感は両社一歩もに譲りません。注目する点とすれば、やはり「中望遠+開けた絞り」での「ボケ像」の在り様、に尽きるでしょうか。ボケ像のエッジが柔らかく、滲むように溶けて行くのが「ZUIKO」、一方ボケ像に実像のエッジをやや残すことで立体感をより強く感じ取れるのが「Nocticron」そんな印象を受けました。特に「Nocticron」では、ボケ量の大きさだけでなく、その表情が絞りによって多少変化する様です。
究極的には表現目的に合わせた二刀流が理想と感じましたが、描写特性の似たM.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PROをすでに所有していたこともあり(無論2本目の補正予算は国会を通らなかったので)、私のチョイスはキャラクターの少々違う「Nocticron」と決定したのでした。
後悔って訳では決してないのですが、「ZUIKO」もやっぱり欲しいんですよね・・・・・。
ボケ像の特徴を出す被写体を選んでみました。大口径レンズらしい大きいボケですが、ボケの中に被写体の名残りを感じさせる僅かなエッジを感じます。
直射日光の当らない日陰、コントラストの低い条件ですが、独特の空気感と立体感を醸します。最短撮影距離は50cm。欲を言えば35cmが欲しいですがこれもZUIKO45mmと共通。わざとでしょうか(苦笑)
モノクロ+映り物は大好きな被写体です。切り取り感の出始める中望遠の画角は作者の「意思」をフレーミングで表現する感覚が気に入っています。
モニターで確認したときは、背景が少しうるさく感じたのですが、半切サイズにプリントしたものを鑑賞したら、その空気感にハッとさせられました。やはり「写真」はプリントすることも大事なのだなぁと、しみじみ感じた一枚です。
ZUIKOとNocticron、選択に結論を出させた一枚です。後悔は、、、してません。
多分。
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