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2010年10月

2010年10月29日 (金)

CONTAX Distagon 18/4 MM-J

 このレンズは、国産メーカーと比較して高価な価格設定が多かったコンタックスレンズの中にあって、珍しく「バカ高い」といったイメージがなかった貴重なレンズです。

 コンタックス・ヤシカマウントの中では、比較的古参の部類に入り、新設計のDistagon21ミリが投入されるまでは、超広角レンズの中堅を担う代表レンズでした。それ故に、過去に数多の写真家が優れた作品を残した名レンズであり、日本においてZeissレンズの評価を不動のものとした立役者であったとも言えます。

 設計の古さ故、開放f値が4と控えめで、フィルターやフードの取り回しにも若干の制約を受けますが、その古さを感じさせないヌケのよい画像が印象的でした。そして、絞っても適度なウエット感を残し「カリカリ」にならないその描写はモノクロ向きのレンズなのかもしれません。良く補正されたディストーションは、超広角特有の強烈なクセを感じさせず、ひたすらに只、広さだけを感じさせる広角レンズといった感覚で、ファインダーに写り込む全てを優しく包み込んでいました。

 残念ながら、最新の21ミリと比較すると解放f値や解像度の差からファインダーでのピントの山がややわかりずらく、低照度時のシャッタースピードに制約が生じる為、21ミリ購入と同時に手放してしまいましたので、この手元にあった時間がごくわずかでした。もし可能であるならば、デジタルでこの優しい描写を再び味わって見たいものです。

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2010年10月26日 (火)

CONTAX Macro Planar 60/2.8(C) MM-J

 私とZeissとの付き合いを決定づけたレンズが、Distagon35/1.4とこの60mmのMacro-Planarです。

 60mmで撮影された写真を初めて目にしたのは、プロカメラマンへの淡い憧れを抱き始めた中学生の頃でした。当時は馴染みのないその焦点距離と、愛用していたNikon製のレンズとのあまりにかけ離れた販売価格、そしてレンズ毎に与えられていた奇妙な呼び名に対して、単純に「疑念」を覚えた事を記憶しています。描写特性などというものは理解どころか興味もなく、ただその摩訶不思議なレンズによって撮影された一枚の写真とその疑念とが記憶の片隅に残っただけでした。

 写真を学ぶ大学に入り、多種多様な写真と触れ合う機会に恵まれる中での出来事です。授業中プロジェクターによって投影されたクラスメイトの写真を見たある日、あの過去に見たMacro-Planarの映像が、突如記憶の淵から呼び起されました。聞けばそのクラスメイトのカメラは「CONTAX」だと言うのです。どうやら過去にかけられたZeissの魔法が、長い時間をかけて私を完全に虜にしていたようなのです。以降、機材の大半がデジタルで占められる今となっても、新しいレンズを評価する際は、必ずこのレンズの描写を判断の基準とする癖が抜けないでいるのです。

 開放から、いかなる撮影距離でも抜群の結像性能を持ち、かつ他製品とは一線を画くと言ってもよいほどに美しいボケを伴います。絞り込んでも変に堅くならない優れた描特性は、f値を考えなければ常用標準レンズといっても過言ではないでしょう。実際、開放付近では少々クセが残る50mmのプラナーに代わり、私のシステムでの標準レンズを長い間努めていました。また、60mmという焦点距離のため適度に緩和されるパースペクティブは、ポートレートレンズとしても優れた一面を発揮します。

 外観の高級感は一級品ですが、非常に大柄で、ピントリングの回転角も大きくなるオリジナルのMacro-Planar。等倍撮影にさえ拘らなければ、小型軽量なCタイプで十二分にMacro-Planarの魅力を感じることが出来るでしょう。

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Leica DG Macro-Elmarit 45/2.8 ASPH

 「接写用レンズ」いわゆるマクロレンズは、文献複写や資料記録といった学術・研究用途での需要があります。直線を直線に、立体を立体に、色のにじみ無く高解像度で記録することを宿命づけられたこれらのレンズは、結像上問題となる各収差を極限まで補正し、一般レンズでは到底不可能な接写領域から通常撮影距離まで、絞り値の影響を受けずに破綻のない画像を提供しなければなりません。それ故に設計者が心血を注ぎ、傑作レンズと呼ばれる製品が多く輩出される事になります。

 そして、Micro-NikkorやMacro-Planarとならび接写用レンズの代表ブランドとして、このMacro-Elmaritが存在します。Leicaといえば、距離計連動カメラであるM型ライカが有名ですが、接写領域での使い勝手は一眼レフであるR型ライカに軍配が上がります。しかし、優秀な自動機構を備え堅牢で安価な国産一眼レフの前では、R型ライカの人気は今ひとつで、定価も非常に高額であったR用Macro-Elmaritは、中古市場でも非常に貴重な存在となっていました。

 2010年。Panasonicが販売するデジタルカメラ交換レンズ中、マイクロフォーサーズマウントではたった一本となるライカブランドのレンズがこのMacro-Elmaritとなります。決してPanasonicブランドレンズの品質が低い訳ではないのにもかかわらず、カタログ中あえて「Leica社の品質基準をクリア」している事を謳う本レンズの描写には、メーカーの自信と確かにそれを裏付ける何かが存在しているようです。解放絞りから完全に実用になり、合焦部の解像感・ボケの美しさ:コントラストはどれも素晴らしく、小気味よいAFの作動速度と手ブレ補正機構は、35ミリ判相当で90ミリともなる中望遠レンズであることを完全に忘れさせてくれます。

 今の時代にオスカー・バルナックが甦ったのなら、マイクロフォーサーズ規格を立ち上げたのは彼だったのかもしれない、そんな無粋な妄想を抱かせてくれる現代の名レンズです。

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2010年10月20日 (水)

Leica Summicron M 35/2(8Elements)

 基本的には下落傾向のある中古商品の相場のうち、僅かではありますがその商品が通常流通していた頃と比べて明らかに高い相場を形成する商品があります。そして、その殆どの場合は流通数の少なさが原因となっています。

 不人気故に早期に生産を中止した物などは、流通数の少なさがかえって人気を呼ぶという一見矛盾ともとれる不可思議な現象を呼び起こし、価格の高騰を招きます。そして、希なパターンではありますが、十分な流通量があるにも関わらずその流通量を上回る絶大な人気を得た商品の場合も、価格は常に高値で安定します。

 そのレンズ構成から、通称「8枚玉」と呼ばれるLEITZの初代Summicronの35ミリは、後者の理由故十分な流通数を確保しているにもかかわらず、常に高値相場で取引されています。レンズの魔力か、はたまたマスコミの影響力か、このレンズの魅力を語る記述は至る所で目にすることが出来るのですが、それにしても、ここ日本での中古相場は少々高すぎるようです。

 その真意を確かめるべく借用した個体は、数十年の時を経たレンズとは思われないほどのクリアな発色と線の細い中版カメラの画像を思わせる繊細な画質を持った素晴らしい物でした。若干のハイライト部の滲みは、少々ブルー味を帯びた旧LEITZ独特の渋みのある発色と相まってオールドレンズ独特の風合いを上品に醸し出します。現代の解像度の高いレンズと比較しても、決して見劣りしない素晴らしいシャープネスと、オールドレンズ独特の優雅な描写をバランス良く持ちあわせたこのレンズの形成する画像は語り継がれる伝説に相応しいもので、所有欲をかき立てるのに十分な結果をもたらしました。

 ここで酷評でもして、万が一にも相場が下落するのであれば、どんな罵詈雑言をも私の口は惜しまずに発することでしょう・・・・。

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CONTAX Planar 85/1.4 MM-J

 伝説・信仰・崇拝といった言葉が常につきまとうCONTAX/Carl-Zeissの看板レンズ。

 CONTAXを使うなら必ず購入候補に入るこのレンズは、不思議なことに中古市場での新品同様品の出現確率が最も多いレンズでもあります。開放絞りでの何とも言えない甘い描写は、ややもすると単にピント外れの印象しかあたえず、極端に浅い被写界深度とあいまって、ピリッとした画面を作るのに一苦労します。また、85ミリにしては1メートルと少々長めの最短撮影距離は、しばしば撮影者の足手まといとなることもあるでしょう。

 使い手と被写体を常にレンズが選ぶところがあるように思える、このジャジャ馬レンズで傑作を物にするのは至難の業なのでしょうか?。しかしながら、このレンズでモノにした作品は、明らかに代え難い魅力を放ちます。

 それはあたかも、こちらがどんなに惚れこんでも決して振り向いてはもらえないくせに、垣間見せるその微笑みからは決して逃れられない・・・そんな初恋の相手を思い起こさせる、もどかしいレンズです。

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2010年10月18日 (月)

Leica DR-Summicron M 50/2

 通称メガネと称される近接撮影用のアタッチメントを備え、ライカならではの外観と機能美を持ったレンズです。

 本来接写を苦手とするレンジファインダーカメラですが、このレンズは近接専用のアタッチメントによって、その弱点を巧みに克服し、約50センチという一眼レフ用標準レンズ並の近接撮影を可能としています。しかも、その近接アタッチメントの脱着は「誤装着」と「誤使用」を避ける巧みな連動機構を持ち合わせ、その描写力以外にも及ぶライカレンズの魅力が所有欲をかき立てます。

 アタッチメントとの整合性から、製造されたSummicronのうち、特に焦点距離に関しての厳密な検査がされていることから「特に優れたSummiron」であるとの噂がまことしやかに巷に溢れていますが、その真意はいかなる物でしょうか?しかし、御多分に漏れずその描写性能の高さは、ライカレンズならではの独特な空気間、緻密な立体感描写に非常に良く現れ、その発表年代を考えると、近年までのレンズ進歩の歴史に少々の疑念を抱くほどであります。

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CONTAX Distagon 15/3.5 AE-G

 定価70万円。

 今の職場にいなければ、手にするどころか実物を目にすることも叶わぬ、そんな幻のレンズです。500ミリや600ミリなどの超望遠レンズには同価格帯の物や、それ以上の物も多く存在しますが、これらに比べ超広角レンズという特異性のため、圧倒的に市場への流出数が少ないこのレンズを、自らが購入せずにテスト撮影を許されるというのは、まさに役得以外の何物でもないでしょう。

 画角のあまりの広さと、突き出た前玉故、自分の真横にある太陽さえゴースト発生の要因としてしまい、少しでもカメラを傾けよう物なら、あらゆる被写体をデフォルメしてしまいます。使いこなすどころか、普通に写真を撮ることさえ難しく感じます。しかしながら、この画角にしては十分に補正された歪曲収差により不自然な歪みは全く感じられず、発色もクリアそのものです。特筆すべきはシャドーの階調の豊富さで、画面周辺まで像の流れを見せない良好な解像力と相まって、映像の強烈な印象だけにとらわれない非常に端整な映像を描き出します。

 残念ながらたった一日の試用でしたので、次回は違う季節に店頭に並んでいることを願いたいのですが、ちょっとズルイやり方ですかね(^^;

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CONTAX Planar 135/2 AE-G

 明るい開放f値を持つ高性能望遠ズームレンズの台頭により、望遠レンズの主役としての役目をそれらズームレンズに明け渡してしまうまで、135ミリという焦点距離のレンズは望遠レンズの花形でありました。  

 中でも、開放f値を2とする大口径レンズは、望遠レンズラインナップのフラッグシップとして各メーカーの心血を注いだ傑作レンズが多く、それぞれが数多くの伝説を生んでいます。それは、CONTAXブランドにおいても例外ではなく、このPlanar135mmf2も様々な逸話に溢れています。販売本数の減少でコンタックスレンズの販売終了を待つまでもなく、ラインナップからは削除されこそしましたが、CONTAX60周年記念販売品として限定発売されたモデルは、デジタルカメラ用レンズ全盛の現在でもかなりの高値で取り引きされることも少なくない、幻のレンズとなっています。

 開放では、適度な解像感とやわらかな質感が絶妙なバランスを見せ、薄いベールをまとったかのような美しい前後のボケとともに、主要被写体を美しく浮き立たせます。絞り込めば、一段と先鋭度と色のノリを増し、針の穴をも通す様な繊細で切れ味鋭い画像を提供してくれます。伝説の中に閉じこめておくのは余りに惜しい、このレンズの本当の所有権を得ることができるのは、いったい何時の日になるのでしょう。

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2010年10月13日 (水)

CONTAX Leica-M改造 Hologon 16/8

 僅か3枚のガラスが作り出す焦点距離15ミリの超広角レンズHologonのオリジナル。

 その圧倒的に広い画角を、皆無と言って良いほどの少ない歪曲収差で結像させるこのレンズはライカ用レンズとしては希なZeiss-Madeという素性の特異性と不明な製造本数、そしてその代え難い描写性能故、何時の頃からか「悪魔に魂を売りわたしてでも手にしたいレンズ・・・」と言う形容が付いて回るようになったと言います。

 また、有名オークションや大規模な中古市場では必ずその目玉として出品され、常に数十万から時には百数十万円での取引が行われるコレクターズアイテムとしてもその名はあまりにも有名です。ですから、オリジナルに若干の設計変更を加え、CONTAX-Gマウント用超広角レンズとして本レンズが登場、さらに、比較的安価でのライカMマウントへの改造を引き受けるサービスが存在することは、いったい何人のフォトグラファーの魂を救ったことになるのでしょうか?

 特異な光学系のため絞り機構を組み込めず、さらに画面に均一な露光を与えるためには専用のグラデーションフィルターを取り付ける必要があり、また距離計には連動しないため目測でのピント調節が必要となるなど、使用方法にも非常に制約が多いレンズではありますが、広角レンズ中、肩を並べる者のない歪曲収差の少なさと、強烈なパースペクティブの誇張、少ない構成枚数がもたらすクリア且つ素晴らしい発色の映像は、見る物を摩訶不思議な世界へと誘います。

 噂通りの魔性のレンズ、このHologonの魔法にかかったら、魂とは言わなくてもボーナスの一回分くらいは覚悟した方が良いのかもしれません・・・。

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CONTAX Tele-Tessar 200/4 AE-G

 近い焦点距離に復刻オリンピアゾナーでもある名高いSonnar180mmf2.8を控え、Vario-Sonnar80-200mmf4という強力なズームレンズのライバルの出現以来すっかりと出番を無くし、雑誌などでも過去にあまり紹介された記事を見たことがない200mm。販売期間の短さも手伝って中古カメラ店でもその姿を希にしか見ることができないTele-Tessar200mmは、描写性能追求のため一般的に大型化、重量増加しがちなZeissレンズラインナップ中Sonnar85mmなどと並び小型軽量の部類に入ります。

 その構成枚数の少ない無理のない設計のためか、非常にクリア且大変に艶のあるい色ノリの画像を提供し、「開放F値の暗い=廉価版」というイメージは一切漂わせません。開放から切れ味の鋭い描写がウリのSonnar180mmとは違い、開放絞り付近では丸み、暖かみを帯びた絶妙な描写をします。望遠レンズ特有の大きなボケもガサついたところが無く、深度の浅い合焦部を美しく引き立てます。

 ズームレンズとはいえ非常に優秀な結像性能を誇る80-200mmと比較し、コストパフォーマンスで見劣りこそしますが、手放した過去の自分に少々の後悔を覚えます。ISO感度を自由に操れるデジタルカメラにおいては、f値一段分よりも、その小型・軽量な鏡筒が大きな武器となるでしょう。Sonnar85mmやDistagon35/2.8とともに、Zeissのスモールレンズが脚光を浴びる時代がやってきたのかもしれません。

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