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2020年11月

Lumix G Fisheye 8mm f3.5

 Panasonicのマイクロ4/3規格用交換レンズは、小型軽量で誰にでも親しみやすいデザインと、ポップでカラフルな外装を纏ったボディー群とは裏腹に、販売ターゲットを明確に意識したものに感じられます。一般ユーザーをターゲットとしたであろう14-45ミリと45-200ミリの2本を除けば、8ミリ対角線魚眼・7-14ミリ超広角ズーム・45ミリマクロレンズ・14ミリ広角単焦点・20ミリ標準系単焦点と、そのどれもが存在理由を明確に与えられた一本一本となっています。

 中でも最も異色を放つ8ミリの対角線魚眼レンズは、形成される特殊な画像故に決して多くの需要は見込めないと思われますが、システムの発表初期の段階から発売が決定していたようで、開発陣・営業サイドともに、このシステムへいかに力を入れていたかが改めて実感できます。事実、非常に描写性能の高い各レンズに倣い、特殊レンズでありながら非常に端正な結像をします。解放から十分にシャープネスを発揮し、f4あたりからすでに全面に渡って均一な解像性能を有しています。むしろf8で現れはじめる回折を考慮し、あまり絞り込まない方が得策と言えるでしょう。逆光性能も非常に優秀で、フレア・ゴーストともに極わずかで、シャドー部の諧調もしっかりと粘りを見せてくれます。屋外利用では太陽が画面に入り込むケースが多い超広角レンズですから、この性能は大きな武器になります。光学系に採用したEDレンズの恩恵からか、像のデフォルメが大きく発生する周辺部でも醜い色収差は認められず、安心して作画に没頭させてくれるでしょう。

 ライブビューで本レンズを構えると、背面液晶に映し出される景色はまるで、異世界への入り口にでも立っているような錯覚を覚えさせ、写真を撮るのを忘れて見とれてしまいます。どうやらライブビューで覗くフィッシュアイレンズの映像は、新しい可能性を感じさせてくれたようです。

 

 

P1000497

建築物など、直線で構成される被写体では本レンズの特性が発揮されます。何を写しても「異質」な印象を与えてしまうため、かえってマンネリ化してしまい易いとも言え、やはり使いこなしも「異質」な能力が必要なのかもしれません。

 

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対角線方向に180度という視覚を超えた画角を持ったレンズですから、実際ファインダーを確認するまで何がどう写るのか想像するのも難しく感じます。駐車場での一コマですが、正面の壁、実際は平面なのにご覧の描写。僅かのカメラの傾きにも神経質になりますね。

 

P1000478

超広角レンズですから、屋外使用する際には太陽が画面に入り込むケースが多くなります。ですが逆光耐性は十分に高いと言えますので、偶発的に発生するゴーストに気を付けさえすればクリアでコントラストの高い映像を提供してくれます。 

 

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8mmという焦点距離により被写界深度は非常に深く、屋外では多くの条件でパンフォーカスに近い描写になります。合焦とボケの使い分けによる画面構成がほぼ利用できなくなるので、いやでも画面構成力が試されることになります。使いこなすのはなかなか骨が折れますね。

  

 

プロフィール

フォトアルバム

世界的に有名な写真家「ロバート・キャパ」の著書「ちょっとピンボケ」にあやかり、ちょっとどころか随分ピント外れな人生を送る不惑の田舎人「えるまりぃと」が綴る雑記帳。中の人は大学まで行って学んだ「銀塩写真」が風前の灯になりつつある現在、それでも学んだことを生かしつつカメラ屋勤務中。

The PLAN of plant

  • #12
     文化や人、またその生き様などが一つ所にしっかりと定着する様を表す「根を下ろす」という言葉があるように、彼らのほとんどは、一度根を張った場所から自らの力で移動することがないことを我々は知っています。      動物の様により良い環境を求めて移動したり、外敵を大声で威嚇したり、様々な災害から走って逃げたりすることももちろんありません。我々の勝手な視点で考えると、それは生命の基本原則である「保身」や「種の存続」にとってずいぶんと不利な立場に置かれているかのように思えます。しかし彼らは黙って弱い立場に置かれているだけなのでしょうか?それならばなぜ、簡単に滅んでしまわないのでしょうか?  お恥ずかしい話ですが、私はここに紹介する彼らの「名前」をほとんど知りませんし、興味すらないというのが本音なのです。ところが、彼らの佇まいから「可憐さ」「逞しさ」「儚さ」「不気味さ」「美しさ」「狡猾さ」そして時には「美味しそう」などといった様々な感情を受け取ったとき、レンズを向けずにはいられないのです。     思い返しても植物を撮影しようなどと、意気込んでカメラを持ち出した事はほとんどないはずの私ですが、手元には、いつしか膨大な数の彼らの記録が残されています。ひょっとしたら、彼らの姿を記録する行為が、突き詰めれば彼らに対して何らかの感情を抱いてしまう事そのものが、最初から彼らの「計画」だったのかもしれません。                                 幸いここに、私が記録した彼らの「計画」の一端を展示させていただく機会を得ました。しばし足を留めてくださいましたら、今度会ったとき彼らに自慢の一つもしてやろう・・・そんなふうにも思うのです。           2019.11.1

The PLAN of plant 2nd Chapter

  • #024
     名も知らぬ彼らの「計画」を始めて展示させていただいてから、丁度一年が経ちました。この一年は私だけではなく、とても沢山の方が、それぞれの「計画」の変更を余儀なくされた、もしくは断念せざるを得ない、そんな厳しい選択を迫られた一年であったかと想像します。しかし、そんな中でさえ目にする彼らの「計画」は、やはり美しく、力強く、健気で、不変的でした。そして不思議とその立ち居振る舞いに触れる度に、記録者として再びカメラを握る力が湧いてくるのです。  今回の展示も、過去撮りためた記録と、この一年新たに追加した記録とを合わせて12点を選び出しました。彼らにすれば、何を生意気な・・・と鼻(あるかどうかは存じません)で笑われてしまうかもしれませんが、その「計画」に触れ、何かを感じて持ち帰って頂ければ、記録者としてこの上ない喜びとなりましょう。  幸いなことに、こうして再び彼らの記録を展示する機会をいただきました。マスク姿だったにもかかわらず、変わらず私を迎えてくれた彼らと、素晴らしい展示場所を提供して下さった東和銀行様、なによりしばし足を留めて下さった皆様方に心より感謝を申し上げたいと思います。 2020.11.2   

The PLAN of plant 2.5th Chapter

  • #027
     植物たちの姿を彼らの「計画」として記録してきた私の作品展も、驚くことに3回目を迎える事ができました。高校時代初めて黒白写真に触れ、使用するフイルムや印画紙、薬品の種類や温度管理、そして様々な技法によってその仕上がりをコントロールできる黒白写真の面白さに、すっかり憑りつかれてしまいました。現在、フイルムからデジタルへと写真を取り巻く環境が大きく変貌し、必要とされる知識や機材も随分と変化をしましたが、これまでの展示でモノクロームの作品を何の意識もなく選んでいたのは、私自身の黒白写真への情熱に、少しの変化も無かったからではないかと思っています。  しかし、季節の移ろいに伴って変化する葉の緑、宝石箱のように様々な色彩を持った花弁、燃え上がるような紅葉の朱等々、彼らが見せる色とりどりの姿もまた、その「計画」を記録する上で決して無視できない事柄なのです。展示にあたり2.5章という半端な副題を付けたのは、これまでの黒白写真から一変して、カラー写真を展示する事への彼らに対するちょっとした言い訳なのかもしれません。  「今日あっても明日は炉に投げ込まれる野の草さえ、神はこのように装ってくださるのなら、あなたがたには、もっと良くしてくださらないでしょうか。」これはキリスト教の聖書の有名な一節です。とても有名な聖句ですので、聖書を読んだ事の無い方でも、どこかで目にしたことがあるかも知れません。美しく装った彼らの「計画」に、しばし目を留めていただけたなら、これに勝る喜びはありません ※聖書の箇所:マタイの福音書 6章30節【新改訳2017】 2021年11月2日

hana*chrome

  • #012
     「モノクロ映画」・「モノクロテレビ」といった言葉でおなじみの「モノクロ」は、元々は「モノクローム」という言葉の省略形です。単一のという意味の「モノ」と、色彩と言う意味の「クロモス」からなるギリシャ語が語源で、美術・芸術の世界では、青一色やセピア一色など一つの色で表現された作品の事を指して使われますが、「モノクロ」=「白黒」とイメージする事が多いかと思います。日本語で「黒」は「クロ」と発音しますから、事実を知る以前の私などは「モノ黒」だと勘違いをしていたほどです。  さて、私たちは植物の名前を聞いた時、その植物のどの部分を思い浮かべるでしょうか。「欅(けやき)」や「松」の様な樹木の場合は、立派な幹や特徴的な葉の姿を、また「りんご」や「トマト」とくれば、美味しくいただく実の部分を想像することが多いかと思います。では同じように「バラ」や「桜」、「チューリップ」などの名前を耳にした時はどうでしょうか。おそらくほとんどの方がその「花」の姿を思い起こすことと思います。 「花」は植物にとって、種を繋ぎ増やすためにその形、大きさ、色などを大きく変化させる、彼らにとっての特別な瞬間なのですから、「花」がその種を象徴する姿として記憶に留められるのは、とても自然な事なのでしょう。そして、私たちが嬉しさや喜びを伝える時や、人生の節目の象徴、時にはお別れの標として「花」に想いを寄せ、その姿に魅了される事は、綿密に計画された彼らの「PLAN(計画)」なのだと言えるのかもしれません。  3年間に渡り「The PLAN of Plant」として、植物の様々な計画を展示して参りましたが、今年は「hana*chrome」と題して「花」にスポットを当て、その記録を展示させていただきました。もしかしたら「花」の記録にはそぐわない、形と光の濃淡だけで表現された「モノクローム」の世界。ご覧になる皆様それぞれの想い出の色「hana*chrome」をつけてお楽しみいただけたのなら、記録者にとってこの上ない喜びとなりましょう。                              2022.11.1

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