M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
「サンニッパ」という響きに、ある種の郷愁を覚えてしまう昭和生まれの私。焦点距離300mmの画角は望遠レンズの代表格であり、解放f値2.8はASA感度(あえてISOではなく)を自在に操れなかったフイルム時代には何物にも代えがたく、100mmを超えるレンズ口径がもたらす圧倒的存在感は写真少年達の憧れでした。また、鉄道・航空・ポートレート・スポーツ・野鳥など、様々な分野のプロカメラマン達が必ずといって所有していたのが「サンニッパ」であり、メーカー純正で30万円を超える高額なレンズでもあったため、その存在とともに、所有者にも羨望の眼差しが向けられました。
オリンパスが放つ本ズームレンズのテレ端は、焦点距離に依存するボケの大きさを除けば、まさに「サンニッパ」。しかも、マイクロフォーサーズが採用する小型センサーの恩恵を最大限に生かし、最短撮影距離70cm・フィルター径72mm・重量880g(三脚座含む)と、フルサイズ対応の「サンニッパ」と比較し、超小型・超軽量と言って差し支えないスペックを誇ります。加えてズームレンズであることによる汎用性の拡大、全域に及ぶ恐ろしいまでの解像感を誇る描写性能、防塵防滴機構や、小型・軽量な本体+ボディー内手振れ補正による撮影フィールドの拡大と、レンズネームに「PRO」を冠するのは伊達ではありません。基本的にレンズはカメラのアクセサリーと考えらますが、本レンズは、レンズを使うためにボディーを選んでもいいと考えるレベルです。
本レンズ購入の直接的動機となったのは、依頼されたミュージカルの撮影なのですが、今ではすっかり主要機材の仲間入りです。暗がりでの解放値f2.8は、被写体ブレを抑え込むためいたずらにISOを上げずに済み、AF合焦の歩留まりも上げてくれます。加えてズームレンズとは到底考えられない解像感・質感描写は、被写体となった演者からも非常に好評を得られました。加えて、3時間に及ぶミュージカル全編を機動性を上げるため手持ち撮影で臨んだのですが、疲労感も少なく翌日僅かに腕にだるさを覚える程度で済みました。当初フルサイズ一眼を持ち込んでの撮影も考えましたが、当然今後も本レンズがメインウエポンの座を譲ることはないでしょう。
フルサイズ換算で80-300mmと、非常に使用頻度の高い画角をf2.8という明るさで実現した本レンズは、ボケ味だけはさらなる大口径の単焦点に譲りますが、画質劣化のほとんど感じられない1.4倍の純正テレコンを含めれば、420mmという超望遠域まで撮影領域を広げられますので、マイクロフォーサーズ用望遠レンズでの真のマストバイアイテムと言えるのではないでしょうか。
全域でズームレンズであることを忘れさせる、圧倒的な解像感を誇る本レンズは、ボケ味はやや「固め」な印象。五月蠅く感じるギリギリ手前のボケでしょうか。それにしてもヌケがよく、コントラストの高い映像です。10群16枚のガラス、本当に入っているのでしょうか?
周辺まで乱れの少ない良質なボケ像。9枚の円形絞りを採用し、ボケが大きくなる望遠レンズの長所をうまく引き出します。口径食の影響も軽微で、きれいな「丸ボケ」が堪能できます。
風景を切り取ることができる、望遠レンズならではの表現。都市景観(と言っても田舎ですが・・・)をスナップするのに、このズーム域はとても重宝します。遠景であれば全域がシャープに結像するのも150mmならでは。小型センサーの恩恵を感じる一枚です。
最短撮影距離はズーム全域で、驚きの70センチ。それにしてもこの解像感。絞りは解放に近いところですが、葉脈の一本一本が間近に存在するようです。落ちたてなのか、まだ瑞々しいその質感も見事に描写。オリンパスといえばマクロ撮影に強いイメージがフイルム時代からありますが、その血統を確かに感じます。
夕暮れの遠景。ボディー内の強力な手振れ補正・軽量なレンズのおかげで、日没後・テレ端の撮影にもかかわらず、手振れの心配をしなくて済みます。街灯上のカラス(?)の足まで完全に解像しています。強烈な光源による悪影響もなく、コーティングも非常に優秀だと感じます。
非常に凝った作りの大型レンズフードが付属しますので、逆光気味の条件でも安心して撮影に臨めます。クリア&シャープな描写は少しも揺るぎません。そのギミック故か、ネット上には故障報告も散見されるフードですが、一度使うと他社も採用して欲しいと感じる絶妙な仕掛けです。
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