「VARIO」は「可変する」といった意味で使われるドイツ語です。日本語では「V」で始まる外国語にはカタカナで「バ」行や「ヴァ」行?の字を当てますので、「バリオ」ないし「ヴァリオ」となります。昨今は便利な世の中になったもので動画サイトでネイティブの発音を容易に確認することも出来ますから、本来はどんな発音なのか気になって聞いてみると思ったよりも濁点感を感じない、どちらかと言えば「ワリオ」に近い音の印象を受けました。某ゲームに登場するヒゲオジサンの目つきが悪い紫色版を想像してしまいがちなので、やはり表記は「ヴァリオ」のままで良いなと、そして「バ」より「ヴァ」の方が格好いいと思ってしまう「エヴァンゲリオン」ネイティブ厨二世代がお送りして参ります。「ヱヴァンゲリヲン」ではない方ね。
さて、この「VARIO」がレンズの名称に使われる場合、聞きなれた言葉に置き換えれば「ZOOM」すなわちズームレンズを意味します。昨今では単に「レンズ」と表記しても、それは「ズームレンズ」の事を指しているケースがほとんどですから、逆にズーム機構を持たないレンズの事を「単焦点レンズ」として区別するようになっていますよね。デジタルカメラの普及に伴って「フイルムカメラ」と言う言葉が生まれたのも同じ理由でしょうし、自動車の世界でも電気自動車やハイブリット車が市場を席捲し、従来のガソリンエンジンを搭載した車の事を「純ガソリン車」なんて急に言いはじめているのも、「新しい呼称=主流の座の明け渡し」を意味する典型例なのでしょう。巷に溢れる生成画像の影響で、カメラで撮影した画像の事を「純写真」などと言い出しはしないかと、本気で危惧する今日この頃ではありませんか・・・・。
話を戻しましょう。「VARIO」によって形容されるレンズの名称は、いずれもドイツを故郷とする、Zeiss と Leica の製品に見る事が出来ます。レンズ名に主としてその構成系の名を据えるZeiss からは、VARIO-SONNAR や VARIO-TESSER 等が、開放 F 値で呼称が決定される事が多い Leica には、VARIO-ELMAR や VARIO-ELMARIT といった名称が使用されています。ELMAR は開放が F4 、ELMARIT が F2.8レンズに通例使われる名称ですが、最近ではより明るい開放 F 値を持ったズームレンズも増えていますので VARIO-SUMMICRON も見られるようになりました。本レンズ VARIO-SUMMILUX に至ってはもともと開放 F1.4 の単焦点レンズに使用されていた SUMMILUX 名からの派生ですが、マイクロフォーサーズ用として DG SUMMILUX 9mm F1.7 や DG SUMMILUX 15mm F1.7 といったレンズが存在している事もあり、SUMMICRON (開放 F2)とNOCTILUX (開放 F0.95~1.2)の間に存在するレンズが SUMMILUX になる、というルールなのだろうと勝手に理解しています。しかし常識というものも年月で変化するようで、ほんの少し前までは SUMMICRON や SUMMILUX がズーム化されるような世界線は想像もできなかったのです。
常識と言えば写真と全く関係のない話ですが、学生の頃一般的なスキー板の適正サイズは身長プラス10~20cm と言われており、2m の板に憧れて無謀に購入する事が武勇伝にもなった程なのですが、現在は身長マイナス5~10cm が基本になっているらしく、しばらくぶりにのぞいたスポーツショップで当初「ここはキッズコーナーか?」と思った場所に並んでいたのは大人用のスキー板だった、という笑えない実体験もあったりします。もっとも、当時はスキー場で滑走制限されていた場所も少なくなかったスノーボードが、現在はすっかりメジャーな存在になっているって事にも時間の重みと常識の変遷をひしひしと感じたりします。ちなみに AI 先生によれば、年配者が楽しめるのは「体力的に」スノーボードよりもスキーがオススメだとの事。納戸に眠ったままの全長 187cm の SALOMON をちょっとだけ磨いてみたりする年配者がここにもおりますが、ゲレンデに出た途端にどこかの骨を折りそうなのでそっと戻しておきますね。
話を戻しましょう。(二度目)マイクロフォーサーズ規格のカメラ・レンズの大きなメリットは、過去ログでも幾度かお伝えしている通り「小型化」と「軽量化」である事は周知の事実。ですが、本レンズ VARIO-SUMMILUX 10-25mm F1.7 は、「大きさ」「重さ」をある程度許容できるなら、フルサイズでは制作が難しくなるスペックのレンズを作ることができるのではないか?という逆のロジックによって開発されたある種の異端児とも言えるでしょう。画角をフルサイズに換算するなら超広角域の 20mm から標準域 50mm までをカバーする本レンズは、数値の差以上に画角変化が大きく、加えて開放 F値は 1.7 と単焦点レンズに匹敵する明るさを与えられたことで、絞りの変化に対する映像表現の幅も相当に広く取れるのです。画角変化のみで考えるなら、マイクロフォーサーズには、8-25mm・9-18mm (OMDS) や 8-18mm(Panasonic) と言った近似焦点距離のズームレンズが存在していますが、いずれも開放 F値は 2.8 や 4 であり、ズームレンズとしては平均的。一本で得られる表現の幅で考えれば本レンズの存在感は相当に大きな物と言えます。メーカー希望小売価格は税込みで297,000円と堂々としたもので、690gの重量とフィルター径 77mm というスペックもマイクロフォーサーズの標準系ズームでは群を抜きますが、同一シリーズの VARIO-SUMMILUX 25-50mm F1.7 とのセットでフルサイズ換算 20-100mm の画角変化を F1.7通しで得られるというシステムが完成します。定価では 50万円を超える贅沢システムになりますが、こういうマイクロフォーサーズの使い方もちょっと夢があって楽しそうではありませんか。いずれのレンズも中古での入荷頻度は相当低いのが難点ですけどね。

10-25mm という画角変化はお散歩スナップにとても相性がいい感じ。100mmクラスのマクロを合わせて携行すれば、殆どの被写体にアプロ―チできます。ノイズ耐性が気になる小型センサー機だからこそ、余裕のある開放 F 値は真価を発揮します。焦点距離・絞りを変えても描写の均質性は高く状況に応じたフットワークの軽い撮影が可能です。

焦点距離10mm (フルサイズ換算画角 20mm 相当)と言えば、少し前まではF2.8 辺りの開放値が常。F2 を超えた明るさ、しかもズームレンズで実現とは正直信じられないのです。ワイド端、近接、開放でもこの立体感と素直なボケ味とくればなおさらの事。比較的大型のレンズになりますから、最短撮影距離の 28cm は被写体との接触を警戒する必要が発生するほどです。

こちらはテレ端25mm (フルサイズ換算画角 50mm 相当)での開放描写。マイクロフォーサーズでも近接+ F1.7 でタップリとボケてくれます。それにしても単焦点顔負けの素直なボケ味に、本レンズがズームである事を忘れてしまいそうです。

高周波成分となる小石のボケ像はほんの僅かチリチリとした感じにもなりますが、総じて周辺まで癖の少ない良好な画像を形成。F1.7 という短焦点顔負けの明るさを誇るズームレンズでこれだけの画質。当初はここまでの写りは想像していなかっただけに驚きを隠せません。

建築の内装撮影等、カメラアングルが限定されるシチュエーションではやはりームレンズが圧倒的に便利だと実感。設計の古い建築の為か、廊下も部屋もかなり狭いと感じる建物ですが、ワイドズームの利点を生かしリズム良く撮影ができました。

様々な方向にパースが発生するのがワイドレンズによる室内撮影の面白さ。少しのアングルの変化で全く違う映像に出くわします。ズームさせることでさらにバリエーションが増えるのが、普段単焦点しか持ち歩かない筆者にとっては新鮮でした。これはヤミツキになるレンズかもしれませんね。

この被写体は、以前に OLYMPUS の 25mm F1.2 PRO でも撮影。開放の差によるボケの大きさに違いこそありますが、このレンズの只者ではない感もなかなかのものです。いわゆる標準ズームをこれ一本で賄うシステムもアリですね。

10mmの開放で、周辺減光を楽しんでみます。F1.7 でもある程度遠景になれば被写界深度に収まってしまうのが小型センサー機による写真の面白いところ。難しい条件ですが、周辺まで十分な解像度が保たれているのは嬉しいですね。

本レンズは17枚ものガラスを有した光学系で成り立ちます。しかし極端な逆光下であってもゴーストやフレアに悩まされることはほぼありません。9枚羽根の絞りを搭載しますので、絞り込んだ際は18本の豪華は光芒が得られます。これだけ逆光耐性が高いと、太陽が入り込みやすい超広角の画角でも安心ですね。

東京方面に直帰の出張があった際、余った時間でニコンミュージアムを見学。本社前のモニュメントに肉薄して 10mm時の近接描写チェックを。いわゆる退勤時間に重なったためか、ビルの中から社員と思しき方たちが次々と出てきたのですが、OMDS のボディーに Panasonic のレンズを付けて撮影していたため、ちょっとだけ視線が痛かった様な・・・・・。いや、機材ではなく、奇行が原因ですね・・・・・。
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