M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
デジタルカメラが自身の機材の中心を占め、その圧倒的な利便性に随分と助けられていると感じる事が多いと思う昨今ではありますが、デジタルカメラの登場以来、なかなかに解決されない問題というものも存在しています。特に、実際その問題に遭遇したことがある方も決して少なくないであろう「ゴミの写り込み問題」は、写り込んだゴミの小ささに反比例して作品や作者に大きなダメージを与える事もあるので、とても厄介な問題となります。
フイルム撮影の場合では、その表面に何かしらのゴミが付着したとしても、フイルムは一コマ毎に次々と送られますから、写り込みの影響はそのゴミの付着した一コマ限定で済む事がほとんどです。(例外もありますが)しかし、デジタルの場合は、撮像素子の表面(カバーガラスやローパスフィルーターなども含め)にゴミが付着した際、そのゴミを取り除かない限りは、以降全ての撮影画像にゴミが写り込んでしまうという深刻な事態に発展してしまいます。
勿論、カメラメーカーもこの「ゴミ問題」を放置している訳ではなく、近年では殆どの機種で、センサーやカバーガラスのゴミを振り落としたり、ゴミの侵入を防ぐ構造を持たせたりといった対策を講じています。しかしそれでも、我々の生活環境はクリーンルームではないのですから、カメラ内へのゴミ侵入を完全に遮断する事はできませんし、とりわけレンズマウント部は、ゴミ最大の侵入ゲートとなりますから、「私は一切レンズ交換をしません」と豪語するお客様にそれなりの頻度で遭遇するのもある種納得の行く話ではあります。
そんな訳で、デジタル時代になってからは「携行時の荷物を減らす」以外にも、「レンズ交換の頻度を下げてゴミの侵入を(ある程度)防ぐ」という新たな使命?を与えられたのが「高倍率標準ズームレンズ」なのではないかと思うのです。(長いプロローグですみません)12-100mm(35mmフルサイズ換算画角で24-200mm)という広角から望遠域までを一手に賄うM.ZUIKOの本レンズは、そのカバーする画角の広さに加え、解放f値を比較的明るめなf4とし、さらには防塵防滴構造や超強力な手振れ補正を装備し、描写性能も折り紙付きとなる「PRO」ラインの製品として販売されている点は特筆すべきでしょう。時として広角から望遠域までをカバーする高倍率ズームレンズは、画質面や解放f値の点で「それなり」と感じる事も多く、本気モードの「撮影」がメインとなる場面への投入にはどうしても本腰が入らないのが事実なのです。
しかし、デジタル化移行当初から光学系のテレセントリック性に配慮し、小型センサー機のメリットを熟知してきたオリンパス(現OMDS)が放つ本レンズは、マイクロ4/3フォーマットの持つ強みを生かし、描写性能を犠牲にする事なく高倍率化を果たした標準ズームの決定版ともいえる性能を見せます。解放から完全に実用になる解像感、ズームレンズとは思えない癖の少ないボケ味は、多くの場面で納得のいく画像を提供してくれますし、とにかく強力な手振れ補正による圧倒的低速シャッターへの対応は、SNSなどで手持ち撮影の低速シャッター自慢を目にすることも多く、手持ち撮影の常識を覆したと評しても問題ないでしょう。実際、カメラホールディングに多少の心得があれば、1秒程度のスローシャッターでも望遠側で簡単にシャープな映像を手に入れることができます。近接能力もワイド時でレンズ前面から1.5cmと高く、よほどの事がなければマクロレンズの必要性も感じないかと思える程。欠点を挙げるとすれば、それは20万円を超えてしまうメーカー希望小売り価格くらいのものでしょうか。「ゴミ問題」への対応はともかく、本当にレンズ交換の必要性を感じる場面の少ない試用期間となりました。
このレンズを買ってしまったら、当ブログの存在意義がなくなってしまいそうなので、断じて私個人は購入しないんですけどね・・・・・・・・・・・。
ボケが小さくなりがちな小型センサー機ですが、100mmまである望遠があれば、そこそこ大きなボケを手に入れることができます。癖の非常に少ないボケ味と合焦部の高いシャープネスは、多くの場面で説得力の高い映像を与えてくれます。
シャープネスが高いレンズが多いM4/3系の単焦点交換レンズと比べても見劣る点が少ないレンズかと思います。特に解放f値に必要性を感じない撮影であれば、本当にこれ一本で間に合ってしまいそうです。
近接撮影でも「おまけ」的な妥協点は見いだせません。周辺まで丁寧な質感描写。気合いれて被写体と向き合えないと、平凡な写真を量産してしまいそうでちょっと怖かったりします。
噴水用のプール内に設置されたイルミネーション用の電送ケーブルでしょうか。意識した訳ではないでしょうが、素敵な幾何学模様を形成していました。フルサイズ換算で200mmまでの望遠があれば、遠景をトリミングした撮影もレンズ交換なしで可能に。
人物がブレていることからも低速シャッターなのはお分かりいただけるでしょう。1秒程度のスローシャッターであれば本レンズの手振れ補正は余裕で対応可能。高いISO感度に頼りたくない性格(フイルム時代の呪いなんですけどね)なので、この低速耐性は魅力です。
逆光に近い状況ですが、コントラストの低下もない優秀な画質。「PRO」を冠するのは、様々な状況で欠点を見せることが少ない証。決して構成レンズの枚数は少なくはないのですが、そんな事は微塵も感じさせないクリアな描写です。
広角側でも解像度は相当に高いレンズです。小さく、細かい被写体も繊細に描写。ガタイの良い望遠レンズ然とした大型のレンズ(M4/3にしては)ですが、広角レンズとしても無論優秀な一本になります。
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