Leica DG VARIO-ELMARIT 8-18mm F2.8-4.0
マイクロフォーサーズフォーマットのカメラを使用する大きなメリットの一つに、賛同メーカーから販売される多数のレンズを利用できる事が挙げられますが、とりわけメインボディーのメーカー2社(オリンパス・パナソニック)のカメラ・レンズ群が、ほぼシームレスに相互活用できる事は、その描写性の違いを作風に織り込んだ制作を好む写真愛好家にとっては、とても魅力的に感じる事だと言えるでしょう。しかしそれは同時に、似通ったスペックの違うレンズからどのレンズを選択するべきかという課題に、常に付きまとわれる事も意味しています。
その難題の一つが、フルサイズ換算20ミリ以下のワイド端をもつ超広角ズームレンズの選択となるでしょう。オリンパスからは、9-18/4-5.6・7-14/2.8PRO、ライカ・パナソニックからは7-14/4・10-25/1.7・本レンズ8-18/2.8-4と、なんと5本ものレンズがラインアップされているのです。しかも、それぞれが非常に高い描写性能と特徴を持つため、最適解がユーザー毎に全く変わってしまうのです。そして、あくまで「個人的な見解」という前置きをした上で、過去にパナソニックの7-14/4を所有し、その他のレンズも期間は短いですがそれなりに試用する機会が得られた私が出した結論は、本レンズ8-18/2.8-4となりました。
ロジックはこんな感じです。まず、過去7-14/4を所有していた際、保護フィルターを装着できなかったため、前玉への汚れの付着とそれに伴う清掃や、携行時の傷防止にかなり神経質にならざるを得なかった経験から、両社の7-14mmは選択から削除。非常に軽量・コンパクトさが魅力で、保護フィルターも装着できるオリンパス9-18mmは、機械的故障のリスクが多少なりとも上がってしまう沈胴機構がネックとなり除外しました。残ったライバルは同じパナソニックから発売された最新レンズの一本10-25/1.7となる訳ですが、すでにズーム両端に近いライカ(パナソニック)12/1.4とオリンパス25/1.2PROを所有している事と、前述の5本の中ではとりわけ大型となってしまう点から、こちらは次点となりました。(選んだところで買えももしないクセに・・・・・というツッコミは甘んじて受け入れますヨ)
さて、本題に入って8-18の紹介といきましょう。Leicaのお墨付きDGシリーズという事で、シャープネスや各収差の補正(デジタル補正含め)といったレンズの基本性能的な部分は当初から全く疑う余地のない高性能。公表されているMTF曲線が、超広角ズームレンズとしては異常と感じるほど優秀な値を示しているのも頷けます。ワイド端解放では僅か周辺部に解像感の低下を感じますが、実用性を損ねるレベルではありません。1絞りも絞ればズーム全域で非常にシャープネスの高い映像を提供してくれます。被写体が小さく写りがちな広角レンズではとても重要な要素ですから、その満足度も比例して高くなります。逆光性能も高く、太陽を直接画面に入れるような状況でなければ、画面のコントラストを低下させるようなフレアもほとんど感じません。付属のフードも作りの良さが光り、回転ロック機構のおかげで、ワイド端でも誤ってフードを写し込む事故を防いでくれます。MFやズームの操作性も高く、金属製鏡筒は精密機械を所有している満足感を与えてくれます。
8mm(フルサイズ換算16mm)という超広角域での撮影が可能なのはもちろんですが、テレ端が18mm(フルサイズ換算36mm)と、自身が好む準標準画角まで到達してくれる点が地味ながら非常に役立った点も購入の決定打となりました。(7-14所有時はテレ端が28ミリ相当と広角レンズ感がかなり残ってしまっていましたので・・・)そして、これは期待していなかっただけに衝撃を受けたのですが、ボケの描写が超広角ズームであることを忘れるほどに素直であった点にも触れておかなければならないでしょう。ボケを生かした撮影が小型センサー機の超広角レンズで可能となれば、表現の幅が格段に広がります。まだまだ褒め足りない部分もきっとあるはずなのですが、テスト撮影の結果にここまでワクワクしたのはとても久しぶりでした。大学時代に浴びたライカの洗礼、効力いまだ衰えずと言ったところでしょうか。
椅子の網目など、細かい部分まで本当に良く解像されて気持ちの良い画質です。比較的近接しての撮影ですが、被写界深度に余裕のある小型センサー機ですので絞りすぎによる回折ボケを回避できるのがうれしいですね。
テスト撮影時のお気に入りの被写体。少し色づき始めた蔦の葉やガラス面に反射した木々、湿り気を帯びたコンクリートの壁面、それぞれの湿度の違いが見事に伝わります。
逆光・ワイド端・解放・近接。意地悪の極みのような条件ですが、この描写。硬さは残るとはいえ、超広角ズームのボケとしては極上の部類かと。合焦部の解像感も損なわれていないのは、やはりライカ基準の品質だからでしょうか。
ライカやツァイスのレンズを評する際「空気が写る」といった表現が良く使われますが、なるほど、そんなセリフも自然と口から出てくるのがわかる気がしませんか?
鳥居の朱色と葉のグリーンが美しいコントラストを作ります。逆光性能も高いですから、このような撮影にも何の心配もありません。
モノクロのトーンも見事ですね。ハイライトからディープシャドーまで非常につながりが良く、うっとりする程です。日没前とは言えかなり暗い条件でしたが、良く効く手振れ補正(本レンズには手振れ補正機構は内蔵されていませんので、ボディー内の補正のみとなります)は撮影スタイルを大きく変えました。
こちらは、7-14/4でも撮影したことがある被写体。ワイド端1mmの差、作画への影響が実は小さくないのですが、心配性のため保護フィルター使用の可否も重要なファクター。いまにも小雨がぱらつきそうな条件では、その有難みが身に沁みます。
テレ側18mmというのも大きな安心感があります。パースを控えめにした「ノーマル」然とした写りが一本のレンズでまかなえるのは魅力です。レンズ交換の手間を省けるのはズームレンズの最大の恩恵ですが、7-14mmではこうはいきませんでした。
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