CONTAX G Biogon 28mm f2.8
絞り羽根を挟み、前後対象にレンズを配置する対象型レンズは、描写上問題となる各収差を効率的に除去できる設計方法として、レンズ設計の中では非常に歴史が古く、現在でも大判カメラ用レンズでは主流のレンズ構成となっています。
しかしながら、レンズ後端とフィルム面との間にミラーを配置しなければならない一眼レフでは、短い焦点のレンズを対象型で設計する事は物理的に不可能となります。このため一眼レフ用の短焦点レンズでは、レトロフォーカスと呼ばれるレンズ構成を用いる事が多いのですが、残念なことに新種のガラスや最新の設計理論を用いたとしても、歪曲収差や色収差の補正面において、対象形設計のレンズの性能を再現することは困難を極めます。
ですから、ミラーボックスを排除したコンタックスGシリーズ用の広角レンズとして、「Biogon」の名を冠する対象形設計の銘レンズが復活したことは、写真界にとってまさに福音とも言えるでしょう。 銘レンズの名に恥じない完璧なまでに補正された歪曲収差。少ない構成枚数がもたらす何処までもクリアな画質。そして素晴らしいコントラストと解像感。さらに写りの凄まじさからは想像も出来ないコンパクトな鏡胴とリーズナブルな価格。その魔力はいったい何人のフォトグラファーをGシリーズ所有者と化したのでしょうか。
デジタルのフルサイズミラーレスが発売になるや否や、マウントアダプターが各社からリリースされ本レンズも中古相場が高騰しましたが、センサーへの入射角がきつくなる特性を持つビオゴンタイプの宿命で、デジタルでは周辺画質にいささか問題が出る為か現在では沈静化しています。マイクロフォーサーズでは56mm相当画角と焦点距離も微妙ですので、デジタルでの活用には二の足を踏みますが、この先もしフイルムに戻る機会があったのなら間違いなく購入候補に挙がる一本でしょう。
歪曲収差を小さくできるのは対象型設計最大の恩恵。デジタル補正の無い時代、歪みの少ない広角レンズはそれだけで存在価値がありました。真夏の晴天、コントラストの高い被写体でしたがハイライトからディープシャドーまできっちりと表現してくれました。
赤色を派手目に発色するフイルムを使用。新緑との対比が映えます。フイルム時代は好みや目的に応じてフイルムを使い分けるのが楽しかったのですが、選択肢が年々限られて行きますね。乳剤のロットや現像所に拘っていた時代が懐かしいです。
おなじみの都庁。田舎者なので、高層ビルを見るとつい見上げてしまいます。周辺光量落ちの目立つ条件ですが、被写体にマッチするとドラマチックな絵を作るための優秀なエフェクトになってくれます。
小旅行で訪れた上高地、突然の夕立で雨宿り先を探している時の一枚。Gシリーズはレンズ数本を足しても小型のバックに収まる優秀なシステムでした。軽量で取り回しやすく、レンズが皆優秀だったので、「撮影」がメインでない旅行などにはとても重宝しました。
5群と構成枚数が少ないことも高い逆光性能に貢献。極端な条件でなければゴーストやコントラストの低下などに悩むことはないでしょう。スキャン画像ではうまく伝わりませんが、「ヌケが良い」という言葉の意味を実感できる描写です。
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