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2019年5月

犯人の特定

 パソコンの自作を始めてから、20年という月日を裕に数えるでしょうか。ペンティアム4(ノースウッドコア)から始めたPC自作は、ペンティアム4(プレスコットコア)、ペンティアムD、コア2Duo、コア2Quad、アスロンX4、フェノムX4、AMD-FX8350、Core-i7(3770)、Ryzen2600X等と、CPUのメーカーを跨ぎつつ、自分のPCに収まらず、親族や知人、会社のPCを含めると作成したPCは、すでに両手・両足では数えきれない程になりました。

 おかげ様で?、ソフト・ハードともにそれなりの知識を得て、大概のトラブルは自分で解決できるスキルは身に着けてきたのですが、現在のシステムへ変更してからどうしても解決できない謎のトラブルに遭遇していました。

それは、

Windows10の起動に、思った以上に時間がかかる。

といったものです。

OSをインストールしてある起動ディスクは、RAID運用を除けば、現状速度重視の最適解と思われるM2.(PCI-e)インターフェイスのNMVeのSSDですので、スペック的に遅くなるとは考えられません。

無論、メインで活用しているPCですので、メインメモリは8Gx4の32GB、スクラッチ用とライトルームのカタログ用にSATAのSSDを各一台。データ用に2TBのHDDを2台接続というなかなかにヘビーな運用をしていますが、多分これは常識?の範囲内。メモリーチェックに多少の時間がかかるとはいえ、PC-98の頃とは時代がちがいますので、それも無視できる範囲かと。

ネット上の記事では20秒程で起動する報告の多いSSDにかかわらず、当マシンは40-60秒程度、起動の度に待たされておりました。20秒程度の差なんて、オトナシク待ってれば良いのでしょうが、そこは、自作派のゴーストが囁くのです。

何かがおかしい。

で、SSDのファームやら、アライメントの不整合やら、チェックディスクやら、Windowsのアップデートやら、思いつく原因をシラミ潰しに消していったのですが、結果変わらず暗礁に乗り上げ、まあ、起動が遅いだけなので(ベンチの結果は正常)このまま使えばいいやと思っていたのですが・・・・

別件でネットサーフィンをたしなんでいたところ、「SATAのケーブルが原因」で起動が遅くなっていた事があるというブログの記事を発見。慌てて、接続してある各ドライブの接続を確認したところ、とある一台のHDDの接続を外すと起動が早くなることを突き止めました。

幸い、自作派の自宅には余ったSATAのケーブルなんて当たり前に転がっていますので、すぐさま交換して起動。

「遅いじゃん・・・・・」

SATAのコネクタが原因かとも思い、マザー上の接続コネクタを別の所へ変更。

「遅いじゃん・・・・・・・・・」

こうなると、犯人はケーブルではなく、HDD自体ということに。結果、どうやら起動を遅くしていたのは写真データを保存していたHDD「WDのWD20EFRX」という、NAS向けのREDシリーズに属するHDDにあったようです。もちろん、調査環境が限定されているので、HDD自体が原因なのか、チップセットが原因なのが、故障なのか、各々の相性なのか、呪いなのか、血中コレステロールなのか、、、、真相は今一つなのですがHDDを一般モデルへ変更したら、問題は解決しました。 WDのHDDといえば、数年前に「低速病」という、パフォーマンスが異常に低下する事象がネットを騒がせましたが、今回の関連性は不明。 HDDはメーカーや品番を問わず、事故が発生すると大事なデータの損失など、その影響があまりにも大きいので、特定メーカーの不買運動などにも発展しかねませんが、所詮機械ものですので、どんなメーカーのどんな製品であっても、突然のトラブルに備えるよう日々のバックアップが重要なのでしょうね。 今回の事象がどなたかの役に立つこともあるでしょう。

もし、同じ悩みの方がいましたら、何かの参考になれば幸いなのです。

今回の犯人?はNAS向けということで、24時間連続運用を想定したHDDですので、起動時のシークエンスが通常の製品となにかしら違ったりするんでしょうかねぇ。

HDD自体に問題はないようなので、換装後はフォーマットして外付けのデータ用ディスクとして活用することにしますです。

Leica DG Macro-Elmarit 45mm f2.8 ASPH

 「接写用レンズ」いわゆるマクロレンズは、文献複写や資料記録といった学術・研究用途での需要があります。直線を直線に、立体を立体に、色のにじみ無く高解像度で記録することを宿命づけられたこれらのレンズは、結像上問題となる各収差を極限まで補正し、一般レンズでは到底不可能な接写領域から通常撮影距離まで、絞り値の影響を受けずに破綻のない画像を提供しなければなりません。それ故に設計者が心血を注ぎ、傑作レンズと呼ばれる製品が多く輩出される事になります。

 そして、Micro-NikkorやMacro-Planarとならび接写用レンズの代表ブランドとして、このMacro-Elmaritが存在します。Leicaといえば、距離計連動カメラであるM型ライカが有名ですが、接写領域での使い勝手は一眼レフであるR型ライカに軍配が上がります。しかし、優秀な自動機構を備え堅牢で安価な国産一眼レフの前では、R型ライカの人気は今ひとつで、定価も非常に高額であったR用Macro-Elmaritは、中古市場でも非常に貴重な存在となっていました。従って、Panasonicが販売するデジタルカメラ交換レンズ中、マイクロフォーサーズマウントで最初にライカ名を与えられたのがこのMacro-Elmaritだったのは、なかなかに見事な販売戦略であったと思います。

 決してPanasonicブランドレンズの品質が低い訳ではないのにもかかわらず、カタログ中あえて「Leica社の品質基準をクリア」している事を謳う本レンズの描写には、メーカーの自信と確かにそれを裏付ける何かが存在しているようです。解放絞りから完全に実用になり、合焦部の解像感・ボケの美しさ:コントラストはどれも素晴らしく、小気味よいAFの作動速度と手ブレ補正機構は、35ミリ判相当で90ミリともなる中望遠レンズであることを完全に忘れさせてくれます。

 今の時代にオスカー・バルナックが甦ったのなら、マイクロフォーサーズ規格を立ち上げたのは彼だったのかもしれない、そんな無粋な妄想を抱かせてくれる現代の名レンズです。

 

 

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まずはマクロレンズらしい被写体を。咲き始めのアジサイの下、日差しをよけて雨を待つアマガエル。インナーフォーカスによる俊敏なAF・手振れ補正の搭載により、マクロ域においても非常に快適な撮影のリズムが築けます。

 

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画角はフルサイズでの90mm。いわゆる中望遠の画角となり、日常のスナップやポートレートでも活躍してくれます。小雨交じりの天候でしたが、少し湿った空気の感じが見事に伝わってきます。

 

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仕事で出かけた新潟・瀬波の夕景。ほぼ無限域の被写体も解像感高く記録してくれます。最短から無限まで、隙の無い描写はやはりLeicaクオリティー。

 

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マクロ域での撮影は、マイクロフォーサーズとはいえ被写界深度が激薄になります。手振れ補正を頼りにし、カメラ本体をわずか前後させながらピント位置を変えて連写。フイルム時代は多少の運頼みも必要だった撮影ですが、デジタルではその場で納得いくまでリトライができます。

 

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解像感の高いレンズですが、ボケはとても滑らかです。センサーがフルサイズの1/2となるマイクロフォーサーズでは、等倍撮影が可能な本レンズはフルサイズ比2倍の撮影倍率となります。あまり大きく謳われていないのですが、これって結構なメリットですよね。

  

 

M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8

 

 35mmフルサイズ換算で150mmの画角を持つ、異色の中望遠大口径レンズ。300mmの半分と考えればキリの良い数字ではありますが、実際は135mmと200mmという望遠レンズの代表選手に挟まれ、存在感の薄さは否めません。記憶を辿ればフイルム時代の純正ズームレンズや、現行品でも社外品に一部でその存在を確認できますが、単焦点レンズともなると、僅か数本が頭に浮かぶ程度ですから、その画角に馴染みがあるのは少数派なのかもしれません。

 実は私自身その少数派の一人で、生まれて初めて手にした望遠レンズ(ホントは父の所有物)が75-150mmf3.5というニコンのシリーズE(Nikkorという名称を持たない不遇なレンズです・・・)に属するレンズでした。鉄道写真を主に撮影していた当時、連れ立って撮影に出掛ける友人のレンズの望遠端が250mmだったので、子供ながらに、いつも劣等感のようなものにさいなまれていたのを記憶していますが、とにかく自分にとっての望遠レンズは長い間150mmだったのです。

 そして、写真部に在籍した高校時代、その描写力の洗礼を受けたのが大口径の中望遠単焦点レンズでした。以来、単焦点レンズにのめり込んだ自分ですから、この手のレンズには目がありません。まして、これまで数本試したオリンパスのマイクロフォーサーズ用レンズの、確かな性能を実感していた自分にとっては、試さない訳にはいかないのです。格別な思い入れこそないのですが、幼少期から望遠レンズとして馴染んでいた150mmの画角での単焦点。鉄道やポートレートといった被写体との縁は薄くなった昨今ですが、自ずと期待で胸が躍ります。

 解放f1.8という、焦点距離からすれば非常に明るいレンズとなり、マイクロフォーサーズ用の単焦点レンズとしては少し大柄に感じるかもしれません。PENシリーズやパナソニックのGXといった小型のボディーよりは、グリップの大きなE-M1系やパナソニックGH系やG9がバランスが良いようです。金属製の質感のよい鏡筒と、大きな口径を持った前玉を見ると、いかにも「写る」レンズの風格を漂わせます。そしてその雰囲気に違わず、非常に質の高い映像を提供してくれます。合焦面のシャープさはもとより、それを引き立てる前後のボケは非常に癖がなく、ヌケの良いクリアな画像は良い意味での緊張感を与えてくれます。画面周辺までスキのない描写は、オリンパスというメーカーに対し、個人的に感じている「生真面目さ」を体現してるかのようです。専用の大型金属フードの質感も高く、割高感はありますが一緒に手に入れておきたいところです。鏡筒もブラックとシルバー、二色が用意される贅沢。ボディーとのマッチングで、是非お好みをチョイスしてみてください。

 

 

P1000529

非常に精緻な描写を見せる合焦部と大きなボケが対照的な「大口径中望遠レンズ」の特徴が良く表れた一枚。滲んだり、溶けたりといった情緒的なボケにならないのが、本レンズ最大の特徴でしょうか。本当に「真面目」な一本です。クリアで色ノリがよく、とても現代的な写りに好感がもてます。

 

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しっかりとしたボケ像を作ってくれるので、こういった被写体を写すと素性の良さが感じられます。「味」などと曖昧な表現を受け付けない、これが「ボケ」の真のあり方なのだと、設計者の論文を読まされているような気分になります。

 

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解放から相当にシャープなレンズですが、被写界深度を稼ぐ為少しだけ絞ります。ピント面は非常に線が細く、素材の違う金属それぞれの質感を非常に上手く描き分けてくれます。中望遠レンズはポートレートレンズの代表とされていますが、適度に緩和されたパースがこんな被写体にも非常にマッチします。

 

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圧縮された遠近感と特筆するべき素直なボケ。画角故に万能選手とはいきませんが、ズーム一本で間に合わせることが多い望遠撮影において、存在感の非常に大きいレンズです。料理人は種類の違う何本もの包丁を使い分けると言いますが、特定の表現の為に拘りの「一本」用意する、そんな撮影者になりたいものです。

 

M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO

 「サンニッパ」という響きに、ある種の郷愁を覚えてしまう昭和生まれの私。焦点距離300mmの画角は望遠レンズの代表格であり、解放f値2.8はASA感度(あえてISOではなく)を自在に操れなかったフイルム時代には何物にも代えがたく、100mmを超えるレンズ口径がもたらす圧倒的存在感は写真少年達の憧れでした。また、鉄道・航空・ポートレート・スポーツ・野鳥など、様々な分野のプロカメラマン達が必ずといって所有していたのが「サンニッパ」であり、メーカー純正で30万円を超える高額なレンズでもあったため、その存在とともに、所有者にも羨望の眼差しが向けられました。

 オリンパスが放つ本ズームレンズのテレ端は、焦点距離に依存するボケの大きさを除けば、まさに「サンニッパ」。しかも、マイクロフォーサーズが採用する小型センサーの恩恵を最大限に生かし、最短撮影距離70cm・フィルター径72mm・重量880g(三脚座含む)と、フルサイズ対応の「サンニッパ」と比較し、超小型・超軽量と言って差し支えないスペックを誇ります。加えてズームレンズであることによる汎用性の拡大、全域に及ぶ恐ろしいまでの解像感を誇る描写性能、防塵防滴機構や、小型・軽量な本体+ボディー内手振れ補正による撮影フィールドの拡大と、レンズネームに「PRO」を冠するのは伊達ではありません。基本的にレンズはカメラのアクセサリーと考えらますが、本レンズは、レンズを使うためにボディーを選んでもいいと考えるレベルです。

 本レンズ購入の直接的動機となったのは、依頼されたミュージカルの撮影なのですが、今ではすっかり主要機材の仲間入りです。暗がりでの解放値f2.8は、被写体ブレを抑え込むためいたずらにISOを上げずに済み、AF合焦の歩留まりも上げてくれます。加えてズームレンズとは到底考えられない解像感・質感描写は、被写体となった演者からも非常に好評を得られました。加えて、3時間に及ぶミュージカル全編を機動性を上げるため手持ち撮影で臨んだのですが、疲労感も少なく翌日僅かに腕にだるさを覚える程度で済みました。当初フルサイズ一眼を持ち込んでの撮影も考えましたが、当然今後も本レンズがメインウエポンの座を譲ることはないでしょう。

 フルサイズ換算で80-300mmと、非常に使用頻度の高い画角をf2.8という明るさで実現した本レンズは、ボケ味だけはさらなる大口径の単焦点に譲りますが、画質劣化のほとんど感じられない1.4倍の純正テレコンを含めれば、420mmという超望遠域まで撮影領域を広げられますので、マイクロフォーサーズ用望遠レンズでの真のマストバイアイテムと言えるのではないでしょうか。

  

 

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全域でズームレンズであることを忘れさせる、圧倒的な解像感を誇る本レンズは、ボケ味はやや「固め」な印象。五月蠅く感じるギリギリ手前のボケでしょうか。それにしてもヌケがよく、コントラストの高い映像です。10群16枚のガラス、本当に入っているのでしょうか?

 

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周辺まで乱れの少ない良質なボケ像。9枚の円形絞りを採用し、ボケが大きくなる望遠レンズの長所をうまく引き出します。口径食の影響も軽微で、きれいな「丸ボケ」が堪能できます。

 

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風景を切り取ることができる、望遠レンズならではの表現。都市景観(と言っても田舎ですが・・・)をスナップするのに、このズーム域はとても重宝します。遠景であれば全域がシャープに結像するのも150mmならでは。小型センサーの恩恵を感じる一枚です。

 

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最短撮影距離はズーム全域で、驚きの70センチ。それにしてもこの解像感。絞りは解放に近いところですが、葉脈の一本一本が間近に存在するようです。落ちたてなのか、まだ瑞々しいその質感も見事に描写。オリンパスといえばマクロ撮影に強いイメージがフイルム時代からありますが、その血統を確かに感じます。

 

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夕暮れの遠景。ボディー内の強力な手振れ補正・軽量なレンズのおかげで、日没後・テレ端の撮影にもかかわらず、手振れの心配をしなくて済みます。街灯上のカラス(?)の足まで完全に解像しています。強烈な光源による悪影響もなく、コーティングも非常に優秀だと感じます。

 

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非常に凝った作りの大型レンズフードが付属しますので、逆光気味の条件でも安心して撮影に臨めます。クリア&シャープな描写は少しも揺るぎません。そのギミック故か、ネット上には故障報告も散見されるフードですが、一度使うと他社も採用して欲しいと感じる絶妙な仕掛けです。

 

プロフィール

フォトアルバム

世界的に有名な写真家「ロバート・キャパ」の著書「ちょっとピンボケ」にあやかり、ちょっとどころか随分ピント外れな人生を送る不惑の田舎人「えるまりぃと」が綴る雑記帳。中の人は大学まで行って学んだ「銀塩写真」が風前の灯になりつつある現在、それでも学んだことを生かしつつカメラ屋勤務中。

The PLAN of plant

  • #12
     文化や人、またその生き様などが一つ所にしっかりと定着する様を表す「根を下ろす」という言葉があるように、彼らのほとんどは、一度根を張った場所から自らの力で移動することがないことを我々は知っています。      動物の様により良い環境を求めて移動したり、外敵を大声で威嚇したり、様々な災害から走って逃げたりすることももちろんありません。我々の勝手な視点で考えると、それは生命の基本原則である「保身」や「種の存続」にとってずいぶんと不利な立場に置かれているかのように思えます。しかし彼らは黙って弱い立場に置かれているだけなのでしょうか?それならばなぜ、簡単に滅んでしまわないのでしょうか?  お恥ずかしい話ですが、私はここに紹介する彼らの「名前」をほとんど知りませんし、興味すらないというのが本音なのです。ところが、彼らの佇まいから「可憐さ」「逞しさ」「儚さ」「不気味さ」「美しさ」「狡猾さ」そして時には「美味しそう」などといった様々な感情を受け取ったとき、レンズを向けずにはいられないのです。     思い返しても植物を撮影しようなどと、意気込んでカメラを持ち出した事はほとんどないはずの私ですが、手元には、いつしか膨大な数の彼らの記録が残されています。ひょっとしたら、彼らの姿を記録する行為が、突き詰めれば彼らに対して何らかの感情を抱いてしまう事そのものが、最初から彼らの「計画」だったのかもしれません。                                 幸いここに、私が記録した彼らの「計画」の一端を展示させていただく機会を得ました。しばし足を留めてくださいましたら、今度会ったとき彼らに自慢の一つもしてやろう・・・そんなふうにも思うのです。           2019.11.1

The PLAN of plant 2nd Chapter

  • #024
     名も知らぬ彼らの「計画」を始めて展示させていただいてから、丁度一年が経ちました。この一年は私だけではなく、とても沢山の方が、それぞれの「計画」の変更を余儀なくされた、もしくは断念せざるを得ない、そんな厳しい選択を迫られた一年であったかと想像します。しかし、そんな中でさえ目にする彼らの「計画」は、やはり美しく、力強く、健気で、不変的でした。そして不思議とその立ち居振る舞いに触れる度に、記録者として再びカメラを握る力が湧いてくるのです。  今回の展示も、過去撮りためた記録と、この一年新たに追加した記録とを合わせて12点を選び出しました。彼らにすれば、何を生意気な・・・と鼻(あるかどうかは存じません)で笑われてしまうかもしれませんが、その「計画」に触れ、何かを感じて持ち帰って頂ければ、記録者としてこの上ない喜びとなりましょう。  幸いなことに、こうして再び彼らの記録を展示する機会をいただきました。マスク姿だったにもかかわらず、変わらず私を迎えてくれた彼らと、素晴らしい展示場所を提供して下さった東和銀行様、なによりしばし足を留めて下さった皆様方に心より感謝を申し上げたいと思います。 2020.11.2   

The PLAN of plant 2.5th Chapter

  • #027
     植物たちの姿を彼らの「計画」として記録してきた私の作品展も、驚くことに3回目を迎える事ができました。高校時代初めて黒白写真に触れ、使用するフイルムや印画紙、薬品の種類や温度管理、そして様々な技法によってその仕上がりをコントロールできる黒白写真の面白さに、すっかり憑りつかれてしまいました。現在、フイルムからデジタルへと写真を取り巻く環境が大きく変貌し、必要とされる知識や機材も随分と変化をしましたが、これまでの展示でモノクロームの作品を何の意識もなく選んでいたのは、私自身の黒白写真への情熱に、少しの変化も無かったからではないかと思っています。  しかし、季節の移ろいに伴って変化する葉の緑、宝石箱のように様々な色彩を持った花弁、燃え上がるような紅葉の朱等々、彼らが見せる色とりどりの姿もまた、その「計画」を記録する上で決して無視できない事柄なのです。展示にあたり2.5章という半端な副題を付けたのは、これまでの黒白写真から一変して、カラー写真を展示する事への彼らに対するちょっとした言い訳なのかもしれません。  「今日あっても明日は炉に投げ込まれる野の草さえ、神はこのように装ってくださるのなら、あなたがたには、もっと良くしてくださらないでしょうか。」これはキリスト教の聖書の有名な一節です。とても有名な聖句ですので、聖書を読んだ事の無い方でも、どこかで目にしたことがあるかも知れません。美しく装った彼らの「計画」に、しばし目を留めていただけたなら、これに勝る喜びはありません ※聖書の箇所:マタイの福音書 6章30節【新改訳2017】 2021年11月2日

hana*chrome

  • #012
     「モノクロ映画」・「モノクロテレビ」といった言葉でおなじみの「モノクロ」は、元々は「モノクローム」という言葉の省略形です。単一のという意味の「モノ」と、色彩と言う意味の「クロモス」からなるギリシャ語が語源で、美術・芸術の世界では、青一色やセピア一色など一つの色で表現された作品の事を指して使われますが、「モノクロ」=「白黒」とイメージする事が多いかと思います。日本語で「黒」は「クロ」と発音しますから、事実を知る以前の私などは「モノ黒」だと勘違いをしていたほどです。  さて、私たちは植物の名前を聞いた時、その植物のどの部分を思い浮かべるでしょうか。「欅(けやき)」や「松」の様な樹木の場合は、立派な幹や特徴的な葉の姿を、また「りんご」や「トマト」とくれば、美味しくいただく実の部分を想像することが多いかと思います。では同じように「バラ」や「桜」、「チューリップ」などの名前を耳にした時はどうでしょうか。おそらくほとんどの方がその「花」の姿を思い起こすことと思います。 「花」は植物にとって、種を繋ぎ増やすためにその形、大きさ、色などを大きく変化させる、彼らにとっての特別な瞬間なのですから、「花」がその種を象徴する姿として記憶に留められるのは、とても自然な事なのでしょう。そして、私たちが嬉しさや喜びを伝える時や、人生の節目の象徴、時にはお別れの標として「花」に想いを寄せ、その姿に魅了される事は、綿密に計画された彼らの「PLAN(計画)」なのだと言えるのかもしれません。  3年間に渡り「The PLAN of Plant」として、植物の様々な計画を展示して参りましたが、今年は「hana*chrome」と題して「花」にスポットを当て、その記録を展示させていただきました。もしかしたら「花」の記録にはそぐわない、形と光の濃淡だけで表現された「モノクローム」の世界。ご覧になる皆様それぞれの想い出の色「hana*chrome」をつけてお楽しみいただけたのなら、記録者にとってこの上ない喜びとなりましょう。                              2022.11.1

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