SIGMA 135mm F1.8 DG | Art (SONY-E)
交換レンズの主流が「単焦点レンズ」だった時代、35mm一眼レフ用の135mm単焦点レンズは望遠レンズの代表格だったと言えます。まだまだ一眼レフカメラが高嶺(高値)の花だった頃に、手の届きやすい価格展開でベストセラーとなったPENTAX SPシリーズなどは、現在買取品として持ち込まれる際、標準レンズと共に28mm f 3.5・135mm f 3.5 (f 2.5) がセットになっているケースが非常に多い事からもその一端は伺えます。現在のデジタル一眼入門セットで言えば、ダブルズームキットの望遠側を担っていたと言い換える事もできるでしょう。被写体の引き寄せ効果、浅い被写界深度、大きなボケ、遠近感の圧縮といった標準レンズとは違う「望遠レンズらしい」表現効果がしっかりと感じる事ができる135mm。さらに効果の大きな200mmクラスとなれば画角を含めて標準レンズとの差が大き過ぎて被写体を選ぶきらいもありますから、汎用性を考えれば妥当な着地点だったのでしょう。
総じてフイルム当時のカメラメーカーは、そのレンズラインナップに135mm f2.8 もしくは f3.5スペックのレンズを必ずと言って良いほど加えていましたが、本格的にズームレンズが浸透し始めた頃からは、135mmは35-135mmといった標準ズームレンズのテレ端の焦点距離として我々の眼に触れる事が増えました。一方、70-200mmや100-300mmといった望遠ズームレンズにその焦点距離が内包された事で、その存在感は以前に比べると薄まった印象もありました。やがてオートフォーカス化が進み、カメラメーカー各社から明るさ f 2.8クラスの80-200mmズームレンズがリリースされ始めると、短焦点の135mmは、誰もが購入する普及価格帯のレンズではなく、明るさ f 2 クラスのプレミアムレンズが中心となる、「大口径中望遠レンズ」としての立ち位置を明確化させました。加えて、ソフトフォーカス(Canon EF 135mm f2.8 ソフトフォーカス)やボケにこだわり、主にポートレート撮影に特化したと思われる特殊な肩書を持つレンズ( Nikon Ai AF DC-Nikkor 135mm f2 ・MINOLTA STF 135mm f2.8 [T4.5])が多いのも135mmの特徴となったのです。(上記3レンズは、残念ながら現在は全て製造を終了しています。)
そしてデジタル化を迎えた現在では、f 2 クラスの135mmは、各社で明るさに磨きをかけた f 1.8 クラスへと進化し、価格も含めたプレミア感はさらに増しています。フルサイズミラーレス用としては、Canon・SONY・Nikon 何れのメーカーも135mmには f 1.8 を展開。特にNikonは「Plena」という固有愛称を与える力の入れようですから、一週回ってメーカーの看板レンズとしての側面を持ち始めたと言っても良いのかもしれません。本レンズもカメラメーカー各社がミラーレス化を果たす以前にSIGMAを代表するArtシリーズの一本としてリリースされたのですが、フィルター口径82mm・全長約140mm・重量約1.2キロ(Sony-Eマウント)という弩級仕様。機材の重さが気になりだした初老の筆者などにとっては弩M級の重量。小型のカメラバックであれば、本レンズを取り付けたカメラ一台で飽和状態になります。残念ながら、ミラーレス専用設計モデルのアナウンスを待たず、現在全マウントの生産が完了しましたが、驚愕の描写性能を保持しつつ小型軽量化の期待できるDG-DNシリーズへの転生を期待しようではありませんか。
写り込む被写体全ての情報を望遠レンズ独特の圧縮された遠近感の中に閉じ込めます。繊維の種類毎によって変化する衣類の質感、ハンガーやイーゼルの木目の調子、ファスナーの金属部品の光沢感、素材の持ち味を容赦・遠慮・手抜き無く結像させることで、街角のスナップに極上のリアリティーを生み出します。紛れもなく「良レンズ」。
似た様な被写体が混在する中ですが、合焦部が綺麗に浮かび上がります。ある程度離れた距離からの撮影ですが、135mm の被写界深度の浅さからくる合焦点後ろのボケと本レンズのキレの良さが上手くマッチしました。
生命の神秘ってやつでしょうか。なぜか一本だけが別の方を向くチューリップに、どことなく親近感を覚えるから不思議です。小雨交じりで厳しい条件下でしたが、こういった状況でなければ得られない映像があるのも事実。せっかくの休日が雨天だと気分も滅入りがちですが、強行して撮影に出かけた事でご褒美にあり付けた気分です。
すこしトリッキーな映像です。ウッドデッキにたまった雨水と池の水面、それぞれに対岸の樹木が反射し写り込んでいます。風がほとんどなく水面が凪いでいたためにまるで鏡を覗いているかのような描写になりました。
遠近感が圧縮されたことも手伝い、鎖の重量感が良く伝わってきます。ボケ方の癖が出やすいタイプの被写体であっても上品な描写です。硬すぎず、柔らかすぎずの好印象。これなら存分に開放絞りを堪能できます。
ショッピングモールでウインドーショッピングがてらの撮影。口径82mmとかなり目立つ外観ですから、人込みでの振り回しは神経を使うのではないでしょうか。おそらくは都会だと速攻「不審者」扱い。こんな時は田舎住まいも悪くは無いと思う瞬間です。
繊細な、という表現がが似つかわしい合焦部の描写。しかしながら頼りなさや儚さではなく、凛とした力強さを感じます。こういった小さな被写体を相手にする際、ミラーレス機のAFはとても頼もしく、被写界深度の浅い望遠レンズであっても解放絞りを躊躇なく使えます。
少々悪ふざけ。合焦部の先鋭度が高いから許される映像でしょうか。当たり前ですが、水面の波紋は刻々と変化し、たとえ秒間10コマ以上の連写であっても同一カットは存在しません。20枚ほどのデータからお気に入りをチョイスするのですが、時間を置いてから選択すると、また違ったカットを選んだり・・・・。こういうのもまた写真の楽しみなんですよね。
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