Lumix G Fisheye 8mm f3.5
Panasonicのマイクロ4/3規格用交換レンズは、小型軽量で誰にでも親しみやすいデザインと、ポップでカラフルな外装を纏ったボディー群とは裏腹に、販売ターゲットを明確に意識したものに感じられます。一般ユーザーをターゲットとしたであろう14-45ミリと45-200ミリの2本を除けば、8ミリ対角線魚眼・7-14ミリ超広角ズーム・45ミリマクロレンズ・14ミリ広角単焦点・20ミリ標準系単焦点と、そのどれもが存在理由を明確に与えられた一本一本となっています。
中でも最も異色を放つ8ミリの対角線魚眼レンズは、形成される特殊な画像故に決して多くの需要は見込めないと思われますが、システムの発表初期の段階から発売が決定していたようで、開発陣・営業サイドともに、このシステムへいかに力を入れていたかが改めて実感できます。事実、非常に描写性能の高い各レンズに倣い、特殊レンズでありながら非常に端正な結像をします。解放から十分にシャープネスを発揮し、f4あたりからすでに全面に渡って均一な解像性能を有しています。むしろf8で現れはじめる回折を考慮し、あまり絞り込まない方が得策と言えるでしょう。逆光性能も非常に優秀で、フレア・ゴーストともに極わずかで、シャドー部の諧調もしっかりと粘りを見せてくれます。屋外利用では太陽が画面に入り込むケースが多い超広角レンズですから、この性能は大きな武器になります。光学系に採用したEDレンズの恩恵からか、像のデフォルメが大きく発生する周辺部でも醜い色収差は認められず、安心して作画に没頭させてくれるでしょう。
ライブビューで本レンズを構えると、背面液晶に映し出される景色はまるで、異世界への入り口にでも立っているような錯覚を覚えさせ、写真を撮るのを忘れて見とれてしまいます。どうやらライブビューで覗くフィッシュアイレンズの映像は、新しい可能性を感じさせてくれたようです。
建築物など、直線で構成される被写体では本レンズの特性が発揮されます。何を写しても「異質」な印象を与えてしまうため、かえってマンネリ化してしまい易いとも言え、やはり使いこなしも「異質」な能力が必要なのかもしれません。
対角線方向に180度という視覚を超えた画角を持ったレンズですから、実際ファインダーを確認するまで何がどう写るのか想像するのも難しく感じます。駐車場での一コマですが、正面の壁、実際は平面なのにご覧の描写。僅かのカメラの傾きにも神経質になりますね。
超広角レンズですから、屋外使用する際には太陽が画面に入り込むケースが多くなります。ですが逆光耐性は十分に高いと言えますので、偶発的に発生するゴーストに気を付けさえすればクリアでコントラストの高い映像を提供してくれます。
8mmという焦点距離により被写界深度は非常に深く、屋外では多くの条件でパンフォーカスに近い描写になります。合焦とボケの使い分けによる画面構成がほぼ利用できなくなるので、いやでも画面構成力が試されることになります。使いこなすのはなかなか骨が折れますね。
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