Leica DG Macro-Elmarit 45mm f2.8 ASPH
「接写用レンズ」いわゆるマクロレンズは、文献複写や資料記録といった学術・研究用途での需要があります。直線を直線に、立体を立体に、色のにじみ無く高解像度で記録することを宿命づけられたこれらのレンズは、結像上問題となる各収差を極限まで補正し、一般レンズでは到底不可能な接写領域から通常撮影距離まで、絞り値の影響を受けずに破綻のない画像を提供しなければなりません。それ故に設計者が心血を注ぎ、傑作レンズと呼ばれる製品が多く輩出される事になります。
そして、Micro-NikkorやMacro-Planarとならび接写用レンズの代表ブランドとして、このMacro-Elmaritが存在します。Leicaといえば、距離計連動カメラであるM型ライカが有名ですが、接写領域での使い勝手は一眼レフであるR型ライカに軍配が上がります。しかし、優秀な自動機構を備え堅牢で安価な国産一眼レフの前では、R型ライカの人気は今ひとつで、定価も非常に高額であったR用Macro-Elmaritは、中古市場でも非常に貴重な存在となっていました。従って、Panasonicが販売するデジタルカメラ交換レンズ中、マイクロフォーサーズマウントで最初にライカ名を与えられたのがこのMacro-Elmaritだったのは、なかなかに見事な販売戦略であったと思います。
決してPanasonicブランドレンズの品質が低い訳ではないのにもかかわらず、カタログ中あえて「Leica社の品質基準をクリア」している事を謳う本レンズの描写には、メーカーの自信と確かにそれを裏付ける何かが存在しているようです。解放絞りから完全に実用になり、合焦部の解像感・ボケの美しさ:コントラストはどれも素晴らしく、小気味よいAFの作動速度と手ブレ補正機構は、35ミリ判相当で90ミリともなる中望遠レンズであることを完全に忘れさせてくれます。
今の時代にオスカー・バルナックが甦ったのなら、マイクロフォーサーズ規格を立ち上げたのは彼だったのかもしれない、そんな無粋な妄想を抱かせてくれる現代の名レンズです。
まずはマクロレンズらしい被写体を。咲き始めのアジサイの下、日差しをよけて雨を待つアマガエル。インナーフォーカスによる俊敏なAF・手振れ補正の搭載により、マクロ域においても非常に快適な撮影のリズムが築けます。
画角はフルサイズでの90mm。いわゆる中望遠の画角となり、日常のスナップやポートレートでも活躍してくれます。小雨交じりの天候でしたが、少し湿った空気の感じが見事に伝わってきます。
仕事で出かけた新潟・瀬波の夕景。ほぼ無限域の被写体も解像感高く記録してくれます。最短から無限まで、隙の無い描写はやはりLeicaクオリティー。
マクロ域での撮影は、マイクロフォーサーズとはいえ被写界深度が激薄になります。手振れ補正を頼りにし、カメラ本体をわずか前後させながらピント位置を変えて連写。フイルム時代は多少の運頼みも必要だった撮影ですが、デジタルではその場で納得いくまでリトライができます。
解像感の高いレンズですが、ボケはとても滑らかです。センサーがフルサイズの1/2となるマイクロフォーサーズでは、等倍撮影が可能な本レンズはフルサイズ比2倍の撮影倍率となります。あまり大きく謳われていないのですが、これって結構なメリットですよね。
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