Leica Summar L 50mm f2 Solid(固定鏡筒)
バルナックライカ用標準レンズSummarは、当時ライバルであったContaxの標準ハイスピードレンズ「ゾナー」に対抗して、ライツ社が開発した初期のハイスピードレンズです。
Summarといえば、沈胴タイプが一般的ですが、初期製品の一部は沈胴機構を持たない固定鏡筒で、その独特な先太りのシルエットから日本では「ひょっとこズマール」というニックネームで呼ばれています。製造開始からほどなくして沈胴式へと変更されたために、製造本数が少ない固定鏡筒タイプは、最盛期には数十万円の高値で取引をされた事もあるコレクターズアイテムとなっているようです。
半逆光~逆光では画面全体がフレアで覆われ、常にマイナス側に露出を補正してあげる必要がありますが、比較的優秀なシャープネスによって、画像が破綻してしまう事はありません。日陰に入れば誇張のないコントラストで、被写体の持つ質感をやさしさく伝えてくれます。M4/3フォーマットでの1:1撮影では100㎜相当と、丁度中望遠レン ズの画角となり、ポートレートにベストマッチするかもしれません。
発達したコンピューターと整備された設計理論、そして優れたガラス素材や工作機械のなかった1930年代の製品に、最新レンズと比較できる物理特性は望む べくもありませんが、設計者のセンスと努力、そして試行錯誤によって生み出されたこのレンズには、ある種の畏敬の念を抱かずにはいられません。
コレクターズアイテムとなっている固定鏡胴に比べ、多くが市場に溢れる沈胴式Summarで、ちょっとしたタイムスリップを安価に楽しむ。ライカレンズには時代を超えてなお、我々を惹きつける魅力が宿っているようです。
2次大戦よりも前から存在していたことを考えると、手に取っただけで不思議な感覚を覚えます。このレンズは今までどれほど多くの映像を定着させてきたのでしょう。マルチコーティングなど存在しない時代のレンズですので、光源の位置には気を使いますが、時代を感じさせないシャープネスに関心します。
ヌケの良い現代のレンズと比較すると、どことなく優しく、派手さを抑えた描写をします。古いレンズで撮影された映像は、それ自身がなぜかノスタルジーを感じさせるから不思議ですね。
日陰で撮影すると、ご覧の通りかなり眠い写りになります。デジタル撮影ですので、仕上がり設定でコントラストを上げてしまえばそれまでですが、あえて無補正で。様々な古いレンズも気軽にアダプター撮影が出来るのはミラーレス機の特権ですが、さすがに固定鏡筒のズマールともなると、「おもちゃ」感覚という訳にはまいりませんね。
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