CONTAX Planar 85mm f1.4 MM-J
伝説・信仰・崇拝といった言葉が常につきまとうCONTAX/Carl-Zeissの看板レンズ。
CONTAXを使うなら必ず購入候補に入るレンズですから、中古市場でも比較的容易に探すことができるでしょう。コレクション目的での入手が多いためなのか、新品同様品の出現確率が案外高いレンズでもありますから、根気よく探せば、コンディションの良い状態の中古が手に入ることもあります。しかし、フルサイズのミラーレス一眼も出揃ってきましたから、アダプター撮影用にと、また相場が上がってしまうかもしれませんね。
開放絞りでの何とも言えない甘い描写は、ややもすると単にピント外れの印象しかあたえず、極端に浅い被写界深度とあいまって、ピリッとした画面を作るのに一苦労します。また、85ミリにしては1メートルと少々長めの最短撮影距離は、しばしば撮影者の足手まといとなることもあるでしょう。そういった理由もあって、存分に使いこなさずに手放してしまう方も案外多かったのかもしれません。
使い手と被写体を常にレンズが選ぶところがあるように思える、このジャジャ馬レンズで傑作を物にするのは至難の業なのでしょうか?。しかしながら、このレンズでモノにした作品は、明らかに代え難い魅力を放ちます。それはあたかも、こちらがどんなに惚れこんでも決して振り向いてはもらえないくせに、垣間見せるその微笑みからは決して逃れられない・・・そんな初恋の相手を思い起こさせる、もどかしいレンズです。
ヤシカ/コンタックス時代を代表する85㎜のプラナー。レンズ内周を埋め尽くすガラスの塊を覗き込むと、異世界へ誘われているような錯覚に陥ります。繊細な合焦部と前後になだらかに広がる美しいボケは、数多の大口径中望遠レンズの中でもやはり特筆するべき一本なのでしょう。
唯一の欠点といえるでしょうか?最短撮影距離は約1メートルと、85㎜レンズとしてはやや長めです。この美しいボケをもう少し寄って使用するために7.5㎜という極薄の中間リングを挟み、無限側を捨てて使用。自動絞りに連動しないこの純正中間リングは、やはり特殊な為かオート接写リングセットとは別扱いで単品販売されていました。ひょっとしてこの85㎜の為に用意していたのでしょうか?
遠景を少し切り取って撮影するのにもこの焦点距離は重宝しました。絞るとピント面はさらに精緻となり、引き締まった画像を提供してくれます。
適度な遠近感の圧縮は中望遠ならではの特性。解放付近の柔らかな描写と合わされば、やはりポートレートなどがベストマッチですが、絞った端正な絵作りは、ご覧の様に風景撮影にもピッタリです。
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