2010年10月 8日 (金)

CONTAX Distagon 35/1.4 MM-J

 フィルムでの撮影時、もしレンズを一本だけ持って行くのだったら迷わずこの35ミリを選ぶでしょう。

 f1.4の明るさは大抵のシチュエーションでの手持ち撮影を可能にし、ずば抜けた近接撮影時の能力は、簡単なマクロ撮影までこなします。開放付近では微妙な甘さを残した 合焦部分と、なだらかにつながるボケが人物を美しく捉え、f5.6まで絞ればレンズを交換したかのように素晴らしい色のノリとピントのキレを見せてくれます。フローティング機構の影響からか、撮影距離によっては若干背景のボケがうるさく感じられ る場面もありますが、そんな些細な欠点を補って余りある魅力を持つ、私にとっての万能レンズです。

 開発当時疑問視されたと言われる非球面レンズの導入ですが、今日高級レンズだけにとどまらず、多くの写真用レンズに非球面が導入されていることから考えても、Zeissの設計理念が決して間違いではなかった事が証明されたと言えます。

 常用携行レンズにするには、大柄の鏡筒と、ややもするとボディーよりも高額出費になりやすい価格設定は、決して万人にお勧めできるレンズとは言い難いのですが、デジタルが主流になり、中古相場が非常に下がっている今、Zeissの魅力を実感してみたい方は、まずこの一本をお使いになってはいかがでしょうか。

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CONTAX Macro Planar 100/2.8 AE-J

 このレンズの購入前には、名高い60ミリのマクロを所有していたものですから、 当初は購入の候補にすら入っていなかった100ミリのマクロプラナー。

 依頼された撮影でどうしても中望遠が必要となり、勤め先の売り物を借用したのですが、その個体をそのまま買い上げてしまったほどに、その描写性能には驚愕しました。

 開放から完全に実用になるか、もしくは開放の描写に何かしらの代え難い魅力を感じるか・・・ それが、私個人のレンズ購入時の大きな選択理由となるのですが、マクロの名に恥じず開放から完全に実用となる画面全域の均一な精密描写、しかも、アウトフォーカス部分は、まるで溶けるようなマクロレンズらしからぬ描写を見せ 背景にハイライトを含む線状の物体があっても2線ボケとは無縁。色のヌケやカラーバランスも最高で、私が過去に抱いたマクロレンズに対しての悪いイメージを 一気に払拭してくれました。

 等倍撮影時の異様なまでの鏡筒の繰り出し量にはやや 閉口するものの、60ミリとはまた違った魅力を放つZeissの傑作レンズです。

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2010年10月 4日 (月)

Leica Summilux M 35/1.4

 「ライカってずいぶん高いけど・・・なにが違うのだろうか?」

 こんな疑問が私の心に沸き上がったのは、写真学生時代の後半、 自身の作風のマンネリ化に悩んだ頃であります。

 水洗浴から上がったフィルムを初めて見たときから、その結像の特異性は ある種の衝撃を私の心与え、その後のライカとの付き合いを決定づけました。 この旧式のズミルックスは、非球面が導入され、圧倒的なまでの高性能を謳った 最新のズミルックスの登場まで、「その場の空気まで写し込む」といった評価に代表される 古き良きオールドライカレンズの薫りを、新品で楽しむ事のできる数少ないレンズとして、 ほぼ登場初期の設計のまま、比較的長期間製造を続けられていました。

 ズマリット50ミリとともに「クセ玉」と良く称されるこのレンズは、 主に、開放付近では各収差の影響からくる意味不明なまでのハレーションとゴースト、 そして像のにじみを発生し、直接結像画面をファインダーで確認できないM型ライカでは、 被写体や光線状態を十分考慮しないと、結果が予測と一致しないフォトグラファー泣かせの レンズです。ところが、f値5.6あたりから徐々に絞り込むと描写は一変。 まるで大判で撮影したかのような高い解像度を見せ、しかも像の潤いを損なわない 素晴らしい描写を見せてくれます。

 諸般の事情からすでに手元には残っていませんが、今一度この手に納める日を夢に見る 愛すべきレンズの一本であります。

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2010年10月 2日 (土)

Zeiss Planar 50/1.4ZF

 オスカー・バルナックによって完成された、世界最初の35ミリサイズカメラには焦点距離50ミリのレンズが取り付けられていました。

 以来、遠近感の極度な誇張や圧縮がないこの焦点距離は、35ミリカメラにおけるスタンダードレンズとして定着しました。写真に興味をもった方なら、どこかで必ず耳にするエピソードでしょう。今日の様なズームレンズが一般化するまでの長い間、カメラといえば50ミリを付けて買うのが一種当たり前で、実際、私が幼少期に借り出しては注意された父親のカメラにも、ニッコールの50ミリがり付けられていたのを記憶しています。それ故、50ミリレンズの設計、製造には多くのメーカーが心血を注ぎ、結果として「銘レンズ」とよばれるものが多く存在する結果となっています。ライカのエルマーやズミクロンにはそれぞれ熱狂的な信者とも言えるユーザーがいますし、国産のニッコールやロッコールなどを愛用するカメラマンも多いことでしょう。マニュアルフォーカス時代のキヤノンには、明るさ・レンズ構成別に5種類もの50ミリが存在していた時代もあるほどですから、標準というより、むしろ特殊レンズといった名称が似つかわしいほどです。

 そして、一眼レフカメラ用標準レンズの帝王として、やはり多くのフォトグラファーが愛用する50ミリにZeissのプラナーが掲げられます。開放付近では十分にシャープな合焦部にベールのようにまとわりつく柔らかなフレアがとても神秘的な印象をもたらし、f2.8あたりからは、ほぼ画面全域にわたり最高の解像感が得られます。また、実像感を残しつつ、なだらかに消え行く非合焦部の描写は、このレンズでしか味わえない至高の立体感を演出します。

 Y/C時代のMMレンズでは、開放付近のボケにややエッジが強調されてしまうという欠点がありましたが新生Zeissでは枚数を増やした絞り羽根との相乗効果で、「少しだけ絞った」プラナーの一番美味しいトコロを存分に堪能させてくれました。目隠しをしてでも操作が出来るほど、この手に馴染んだニコンのボディーに取り付けられたこのレンズは、文字通り、これから私の新しいスタンダードとなるでしょう。

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Zeiss Distagon 25/2.8 ZF

 大学時代に愛用していたNikonからCONTAXへと、手持ちの機材を全て変更したのは、 ブライダルのカメラマンとしての仕事をしていた当時、職場の先輩の写真を目にした事がきっかけでした。

 それほどまでにZeissレンズの描写との出会いは鮮烈でした。反面、その後度重なり仕事中のBodyトラブルに泣かされることとなり、やがて、叶わない願いとは知りつつ、 NikonのBodyでZeissのレンズを使用することが、ある種の夢となっていました。

 カメラマンとしての活動を辞め、現在の仕事についてから早十年以上。京セラのカメラ事業撤退から数年たったある日、夢は突如現実となりました。 コシナによるZeissレンズの再生産とNikonマウント化。何の因果か・・・新生Zeissの25ミリをテストする機会に恵まれたのは、親類のブライダル撮影でした。

 一生一度、妹の大舞台でのレンズ試用。プロフェッショナルの現場では考えられない奇行を可能にしたのは、私自身のZeissというメーカーへの、そしてDistagonというブランドへの圧倒的な信頼にほかなりません。 Y/C時代から受け継がれる、ディープシャドーからハイライトまで、きわめてなだらかにつながる トーンの描写がもたらす、画面全体にわたる重厚感。そして画面中心部から周辺まで続く、隙のない解像感の高さ。冬の澄んだ空から差し込む強烈な西日を物ともしない逆光性能。これらを高次元でリファインし、新たなDistagon25ミリへと昇華させた、メーカーの信念と技術力には脱帽せざるをえないでしょう。

 21世紀、新たに蘇ったZeissのDNAは、妹の門出に最高の一枚をプレゼントしてくれました。

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2010年10月 1日 (金)

Leica Summicron M 35/2 ASPH

 とある雑誌記事で目にした、ライカ設計技術者の言葉です。
「日本のライカユーザーは変わっている。我々の新製品は、過去の製品を凌駕する性能を持たせている。しかし、どういう訳か古いモデルを好むのだ。本当に理解出来ない。」

 昨今、M型ライカ用の広角レンズに次々と非球面レンズの採用が行われています。 以前は高精度の非球面レンズを、安価に大量生産する事が困難であったので、 それらを採用するのはごく一部の高価な特殊レンズにすぎませんでした。 しかしながら、近年の光学技術の進歩により、描写力の向上のための選択肢の一つとして 設計者は、非球面レンズの採用を積極的に行う事が出来るようになりました。

 ところが、ライカの看板レンズSummicron35mmの非球面化は、殊に日本ではあまり良い印象を与えなかったようです。伝説と化し、プレミアを伴う相場が30万円を超えていた時分もある初代8枚玉のSummicronへの根強い信仰が、日本には残っているためでしょう。確かに旧式のライカレンズは独特の描写をし、それがある種のライカファンのハートを捕らえてはなさいのも、もっともな事だと理解はしているつもりですが、「重い」「デカイ」「ボケが堅い」「写りに味がない」などと、重箱の隅をつつくようなマネはせず、素直にこの最新レンズの性能の高さを評価して欲しいものです。

 その、恐ろしいまでの画像の先鋭さから、一切の妥協をせずに性能向上に努める、ライカエンジニアの魂を、痛いほどに感じる事が出来るはずです。

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Leica Summarit M 50/1.5

 Zeiss社が発表したかの有名なSonnar50mm-f1.5に対抗すべく、バルナックライカ用の 当時もっとも明るいレンズとして1949年に誕生したのが、このズマリットです。以降M型ライカ用のSummilux50/1.4へとバトンを渡すまで、約10年の間ライカのハイスピード標準レンズの座をつとめました。

 黎明期のハイスピードレンズにありがちな開放時の甘い描写故、クセ玉の代表格とされ、評価する人間の主観によっては「悪玉」とも「銘玉」とも、その評価は極端で、中古相場も世相を反映して乱高下する非常に奇特なレンズです。

 また、製造時期により多数のバリエーションが存在し、各々の保存条件や製造時のばらつきによっても描写性能が変化し、購入にはそれなりの覚悟を必要とします。 私の入手した個体も、購入時は中玉のコーティングが完全に劣化し、それによるフレアの オンパレードで、劣化が原因と解るまでは「う~ん、これがクセ玉の描写か」と 誤った見解を持ったほどでした。

 しかしながら、大変優秀な技術を持っておられる某有名レンズ研究所にて、新たな命を吹き込まれたSummaritは当初の想像を遙かに超えた性能を発揮し、掛け替えのない一本へと復活したのです。

 開放~f2.8程度までは微妙なソフト感をのこした独特の柔らかな描写をし、絹のベールを被せたかのような艶のある美しい画像を形成。f4以降急激に増す先鋭度は8あたりから、仕上がった原版をルーペで覗く目が痛むほどのシャープネスを発揮します。 開放から破綻のない優秀な性能を誇るSummicronを秀才に例えるなら、特定の条件における、撮影者の予測の範疇を越えた描写性能を持つこのSummaritはまさに「天才」の名を冠するレンズなのかもしれません。

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Lumix G 20/1.7 ASPH

 その役割を販売戦略的に見れば、非常に重要な標準キットレンズ。そして、顧客ニーズの最大公約数を狙ったであろうズームレンズセットが、その販売の主流を担うデジタル一眼市場において、異端とも思われる単焦点レンズのキット化には、メーカーの確かな自信が垣間見えます。

 その自信を確かに裏付ける、35ミリフルサイズ換算で約40ミリとなる焦点距離のこの標準レンズは、丸みを帯びつつも十分にシャープな開放f値1.7の描写と、絞り込んだ際の解像感の非常に高い引き締まった画質ともに素晴らしく、明らかに同価格帯のズームレンズとは一線を画していると言えます。

 「誰でも」「簡単に」「綺麗な写真」が撮れることは、デジタル時代におけるカメラ・レンズ開発の1つの指標ではあるのでしょう。でもこのレンズには、

「もうちょっと工夫すれば、きっともっとイイ写真になるよ」

 といった「やる気」を起こさせてくれる、そんなアナログ時代のエッセンスが隠されているようです。パナソニックとの技術提携をしているライカ社往年の名機「ライカCL」の標準レンズとして、ズミクロンの40ミリが付属していた事を思い出せば、なるほど、このレンズには確かにサラブレッドの血が流れていてもおかしくはないようです。

 余談になりますが、巷ではこういった薄型のレンズを昨今「パンケーキレンズ」と呼称していますが、なんとも似つかわしくない「あだ名」を与えられたものだと、この新時代の高性能標準レンズに、わずかばかりの同情を覚えてしまう自分を発見するのです。

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