Leica Summicron M 35mm f2 ASPH
とある雑誌記事で目にした、ライカ設計技術者の言葉です。
「日本のライカユーザーは変わっている。我々の新製品は、過去の製品を凌駕する性能を持たせている。しかし、どういう訳か古いモデルを好むのだ。本当に理解出来ない。」
昨今、M型ライカ用の広角レンズに次々と非球面レンズの採用が行われています。 以前は高精度の非球面レンズを、安価に大量生産する事が困難であったので、 それらを採用するのはごく一部の高価な特殊レンズにすぎませんでした。 しかしながら、近年の光学技術の進歩により、描写力の向上のための選択肢の一つとして 設計者は、非球面レンズの採用を積極的に行う事が出来るようになりました。
ところが、ライカの看板レンズSummicron35mmの非球面化は、殊に日本ではあまり良い印象を与えなかったようです。伝説と化し、プレミアを伴う相場が30万円を超えていた時分もある初代8枚玉のSummicronへの根強い信仰が、日本には残っているためでしょう。確かに旧式のライカレンズは独特の描写をし、それがある種のライカファンのハートを捕らえてはなさいのも、もっともな事だと理解はしているつもりですが、「重い」「デカイ」「ボケが堅い」「写りに味がない」などと、重箱の隅をつつくようなマネはせず、素直にこの最新レンズの性能の高さを評価して欲しいものです。
その、恐ろしいまでの画像の先鋭さから、一切の妥協をせずに性能向上に努める、ライカエンジニアの魂を、痛いほどに感じる事が出来るはずです。
レンジファインダーカメラであるライカのファインダーは、実際に撮影される範囲の外側を同時に見ながらフレーミングができるという特徴があります。画面の外への繋がりを意識したフレーミングの感覚を掴むのにとても好適です。
湿度を失った枯れ枝と、湿度そのものである池の水。質感の違いを見事にフイルム上に定着させてくれます。同系統の物体が連続する被写体はレンジファインダーでピント合わせるのが一苦労。ま、その苦労も楽しんでこそのライカでしょうか。
35mmレンズが持つ遠近感と画角は自分にとっての「標準レンズ」。そして、そんな35mmと相性のよいライカは日常を記録する最高の相棒でした。
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