CONTAX Distagon 21mm f2.8 MM-J
「禁断のレンズ」Distagon21ミリ。
一般的には長焦点レンズで問題となる色収差。それを低減させる為に用いられる低分散ガラスをその光学系に用いたため、書籍「Only Zeiss2」中では「APO Distagon」と詠われ他メーカーの同クラスのレンズと比較して、大きさ、重量では約2倍。価格に至っては3倍近くをカタログ値でマークします。
フィルターサイズも82ミリと巨大で、外見からは超広角レンズというより,むしろ望遠レンズの風格さえ感じさせ、その存在感も一級の物を持ちます。設計の上で、携帯性や、価格よりまず第一に描写性能を求める、Zissの設計思想を改めて思い知らされるこのレンズの描写は、一度味わってしまったら最後。あとは、手持ちの不要機材を全て処分してしまで購入しなければないほどの、強烈な所有欲をかきたてます。
開放から凄まじいピントのキレを見せ、周辺部まで均一な画像を形成します。広角レンズでは形を崩しがちな前後のボケも、近距離から文句無く、美しく合焦部を引き立てます。f2.8のもたらす眩しいほどのファインダー像は1/4秒を切らねばならぬような室内撮影でも確かなピントを約束してくれます。構成枚数の多さと、どうしても写り込みやすい太陽の為の逆光時のゴーストは、ほんの愛嬌と言えるでしょう。
21mmといえども、至近距離では案外ピント合わせがシビアになります。フイルムの特性もありますが、こってりとした色のノリを感じる「らしい」写りです。
歪曲収差も抑え込まれており、直線的な被写体への対応も文句はありません。同社18mmはファインダーでのピント合わせに少々戸惑う場面も多かったのですが、本レンズはf2.8の明るさもあって、ピント合わせが非常にやりやすい印象がありました。
広角レンズで問題となりがちな倍率色収差。デジタルではあらかじめレンズプロファイルの登録によって画像修正で影響を抑え込むのが現在のセオリーでしょうか。周辺まで細かい被写体が連続するシチュエーションでは、光学系の補正のみで倍率色収差を解決する「APO Distagn」の実力が試されます。
構成枚数の多い広角レンズでの逆光撮影とは俄かに信じがたいヌケの良さ。ゴースト・フレアの発生は皆無とは言いませんが、それに悩まされる事は案外多くはありません。
f2.8と比較的明るいレンズですので、日没間際の時間帯でもファインダーでのピント合わせには苦労しません。低速のシャッタースピードを使う時は、大柄のレンズであることがかえってホールディングの安定に寄与してくれる場面もありました。
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