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2010年10月

2010年10月 1日 (金)

Leica Summicron M 35/2 ASPH

 とある雑誌記事で目にした、ライカ設計技術者の言葉です。
「日本のライカユーザーは変わっている。我々の新製品は、過去の製品を凌駕する性能を持たせている。しかし、どういう訳か古いモデルを好むのだ。本当に理解出来ない。」

 昨今、M型ライカ用の広角レンズに次々と非球面レンズの採用が行われています。 以前は高精度の非球面レンズを、安価に大量生産する事が困難であったので、 それらを採用するのはごく一部の高価な特殊レンズにすぎませんでした。 しかしながら、近年の光学技術の進歩により、描写力の向上のための選択肢の一つとして 設計者は、非球面レンズの採用を積極的に行う事が出来るようになりました。

 ところが、ライカの看板レンズSummicron35mmの非球面化は、殊に日本ではあまり良い印象を与えなかったようです。伝説と化し、プレミアを伴う相場が30万円を超えていた時分もある初代8枚玉のSummicronへの根強い信仰が、日本には残っているためでしょう。確かに旧式のライカレンズは独特の描写をし、それがある種のライカファンのハートを捕らえてはなさいのも、もっともな事だと理解はしているつもりですが、「重い」「デカイ」「ボケが堅い」「写りに味がない」などと、重箱の隅をつつくようなマネはせず、素直にこの最新レンズの性能の高さを評価して欲しいものです。

 その、恐ろしいまでの画像の先鋭さから、一切の妥協をせずに性能向上に努める、ライカエンジニアの魂を、痛いほどに感じる事が出来るはずです。

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Leica Summarit M 50/1.5

 Zeiss社が発表したかの有名なSonnar50mm-f1.5に対抗すべく、バルナックライカ用の 当時もっとも明るいレンズとして1949年に誕生したのが、このズマリットです。以降M型ライカ用のSummilux50/1.4へとバトンを渡すまで、約10年の間ライカのハイスピード標準レンズの座をつとめました。

 黎明期のハイスピードレンズにありがちな開放時の甘い描写故、クセ玉の代表格とされ、評価する人間の主観によっては「悪玉」とも「銘玉」とも、その評価は極端で、中古相場も世相を反映して乱高下する非常に奇特なレンズです。

 また、製造時期により多数のバリエーションが存在し、各々の保存条件や製造時のばらつきによっても描写性能が変化し、購入にはそれなりの覚悟を必要とします。 私の入手した個体も、購入時は中玉のコーティングが完全に劣化し、それによるフレアの オンパレードで、劣化が原因と解るまでは「う~ん、これがクセ玉の描写か」と 誤った見解を持ったほどでした。

 しかしながら、大変優秀な技術を持っておられる某有名レンズ研究所にて、新たな命を吹き込まれたSummaritは当初の想像を遙かに超えた性能を発揮し、掛け替えのない一本へと復活したのです。

 開放~f2.8程度までは微妙なソフト感をのこした独特の柔らかな描写をし、絹のベールを被せたかのような艶のある美しい画像を形成。f4以降急激に増す先鋭度は8あたりから、仕上がった原版をルーペで覗く目が痛むほどのシャープネスを発揮します。 開放から破綻のない優秀な性能を誇るSummicronを秀才に例えるなら、特定の条件における、撮影者の予測の範疇を越えた描写性能を持つこのSummaritはまさに「天才」の名を冠するレンズなのかもしれません。

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Lumix G 20/1.7 ASPH

 その役割を販売戦略的に見れば、非常に重要な標準キットレンズ。そして、顧客ニーズの最大公約数を狙ったであろうズームレンズセットが、その販売の主流を担うデジタル一眼市場において、異端とも思われる単焦点レンズのキット化には、メーカーの確かな自信が垣間見えます。

 その自信を確かに裏付ける、35ミリフルサイズ換算で約40ミリとなる焦点距離のこの標準レンズは、丸みを帯びつつも十分にシャープな開放f値1.7の描写と、絞り込んだ際の解像感の非常に高い引き締まった画質ともに素晴らしく、明らかに同価格帯のズームレンズとは一線を画していると言えます。

 「誰でも」「簡単に」「綺麗な写真」が撮れることは、デジタル時代におけるカメラ・レンズ開発の1つの指標ではあるのでしょう。でもこのレンズには、

「もうちょっと工夫すれば、きっともっとイイ写真になるよ」

 といった「やる気」を起こさせてくれる、そんなアナログ時代のエッセンスが隠されているようです。パナソニックとの技術提携をしているライカ社往年の名機「ライカCL」の標準レンズとして、ズミクロンの40ミリが付属していた事を思い出せば、なるほど、このレンズには確かにサラブレッドの血が流れていてもおかしくはないようです。

 余談になりますが、巷ではこういった薄型のレンズを昨今「パンケーキレンズ」と呼称していますが、なんとも似つかわしくない「あだ名」を与えられたものだと、この新時代の高性能標準レンズに、わずかばかりの同情を覚えてしまう自分を発見するのです。

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